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 俺の両親が生きていた頃は、ロゼウス王の父、レイモンドが国を収めていた。  当時は人間の方が上流階級にいて、レイモンドもロゼウス王もまた人間だったはずだが、ロゼウス王が獣人化したのは何か理由があるのかもしれなかった。  そして、レイモンドは正に暴君で、圧政を強いるばかりか、自分の意に沿わない国民がいれば、全員残虐に殺害してきた。  俺の両親が死んだのも恐らくその、レイモンドを怒らせる何かをしたせいだが、間違いなく大したことではなかったに違いない。  両親が殺されるシーンはトラウマになるほどで、レイモンドが憎いというよりも今でも恐ろしいが、死んでしまった今ではどうしようもない。  それに、俺の人生は、いわば両親が亡くなる前の記憶は後づけされたようなもので、奴隷生活からが人生の始まりのようなものだったから。 「俺は、ロゼウス様に感謝しているし、愛とかはまだ分からないけれど、たぶん、少なからず」  心に宿るのは、苦しげな顔をしたロゼウス王を救いたいという思いや、売り飛ばされそうになった自分を救い出してくれたロゼウス王に恩返しをしたいという思い、ただそれだけだった。 「そうと決まれば」  意思を固め、ロゼウス王の元へ行こうとした、その時だった。 「王!大変です」  サーシャがノックもろくにせずに部屋に飛び込んできた。 「サーシャ?」 「あれ、セルディーノだけですか?王は……」 「ロゼウス様は、先ほど出ていかれました」 「そんな。早く見つけなくては」  慌てて部屋を出て行こうとするサーシャを呼び止める。 「待って!俺もロゼウス王を探します。簡単でいいので事情を……」 「暴動が起きたんです!先日、あなたたちを王が買い取ったこともですが、王は身分制度を無視する行動がこれまでも多く、民の反感を買ってしまって」 「そんな!」 「あなたは何もできないから、じっと……」 「俺、王を見つけます!」 「ちょっと!」  サーシャが止めるのも聞かずに探しに行こうとした時、室内に人が数名入って来た。 「え……?」  宮殿には、恐らく俺と元奴隷以外は人間はいない。それなのに、見知らぬ顔ぶればかりで、誰もが宮殿に仕えるにはみすぼらしい姿をしていた。 「あなたたち!一体どこから」 「うるせえ!そんなことはどうでもいい。大人しくしていてもらうぞ」  男たちは、俺やサーシャが暴れるのを軽々と抑え込み、縛り上げた。  そしてどこかへ連れ去ろうとした、その時だった。
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