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長い髪をツインテールに結び、ひらひらのヘッドドレスがよく似合っていた。ふんわりとしたメイド服のスカート丈は膝より若干上で、黒いニーハイソックスとスカートの間にほんの少しだけ肌が見えて、どきりとする。この店の制服であるが、みやびが身に着けるとより一層可愛らしく見えるのは元々の素材のせいだろうか。
うぐぅ。
なんだこの可愛い生き物は、天使かな!?
「お連れ様は?」
「えっあっ星野はちょっと電話で」
「そうなんですねご主人様。ミルクとお砂糖はお入れしますか?」
「いやっ、いらな……」
僕は普段コーヒーには何も入れない派だったが、みやびは何故か残念そうに「そうなんですね」と呟いた。
あれっ、これはもしかしてミルクとか入れてくれるつもりだったのか? ぴんと来て、僕は言い直す。
「た、たまには入れようかな」
「かしこまりました、ご主人様」
みやびは嬉しそうに微笑んで、僕のコーヒーにミルクと砂糖を入れると、スプーンでくるくるかき回した。
琥珀色の液体が、淡くミルクと混じり合ってゆく。普段みやびはツンツンしているが、今ここにいるみやびはなんだか普段と違って見えて、変なふうに緊張した。
「はい、どうぞ。ふーふーしますか?」
「……それはさすがに」
「あっ、メイドさんとイチャイチャしてやがる! いいなー」
ずっと続いて欲しかった空間が、星野の声で突如崩れた。電話が終わって戻ってきたようだ。いやしかし、戻ってきてくれて良かったのかもしれない。僕の理性がどうにかなりそうだ。
「いいなー。俺にもミルク入れて♡」
「星野はブラック無糖だろ」
「はあ? 宮田だってそうだろうがー」
「今日はいいんだ」
「……ははぁん、もしやこちらのメイドさん、みやびちゃん?」
察したらしい星野は、みやびを不躾に眺めた。あんまり見るなもったいない!
「はじめまして、みやびです♡ ミルクお入れしますね」
星野のコーヒーにもミルクを入れ、くるくるしているみやびの姿を見て、得も言われぬ感情がどこかから芽生える。なんだこれは。まさか星野に嫉妬しているのか僕は?
もやもやしている僕に気づいたのか、みやびはちらりとこちらを見て、意味深に笑んだ。いつものツンツンはどこへ行ったんだ。
「いやあ、可愛いなあ。なんで宮田なの? 学校にもっといい男いるだろー?」
「何を言ってるのかわかりません、ご主人様。ではごゆっくり♡」
みやびはするりと躱して、僕達の席を離れた。久しぶりに飲んだミルクと砂糖入りのコーヒーは、なんだかとても優しい味がした。
名残惜しいみやびの後ろ姿を見送る。スカートからすらりと伸びるニーハイソックスの脚がやけに魅力的で、脳裏に焼き付いた。
これはけしてやましい感情ではない。そう自分に言い聞かせた。
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