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番外編 真夏の海の夢
僕がみやびと知り合った時、彼女はまだJKだった。この春やっと卒業して、そのブランドを脱ぎ捨てたみやびは今僕の隣にいる。なんで一緒にいるかって? それは……まあ、いろいろ。
ビーチで布面積の少ないフリルのビキニを身に着けたみやびは、健康的な美しさを僕に晒していた。シートの上に座って荷物を整理していた僕に近づき、屈み込む。……待って。意外とボリュームのある谷間。目のやり場。
勿論ビーチに僕だけ、なんてことはなく、その辺に普通に他の男がいるので気になって仕方ない。悪い虫が寄ってきたらどうする。
「みやび……ちょっと露出が多くないか?」
「こんなもんだけど? 一緒に水着選びに行こうって言ったのに、恥ずかしがって来なかったのはどこの誰かなあ」
みやびはツンと横を向いてみせた。
いやだってそんな……水着を一緒に選ぶとかハードル高すぎないか? そういうことにあまり免疫のないアラサー男を捕まえて、ご無体が過ぎる。
「――もしかして、似合ってない……?」
「え、いや……まさか!」
勿論似合ってる。似合ってるけど。それ以上に目の毒だ。十八になったばかりのみやびは瑞々しい果実のようで、僕の心を容赦なくかき乱してくる。手を伸ばせばすぐそこに、触れられる距離にこんなに魅力的な女の子がいるのだ。
「良く見て判断してくれない? ……宮田さん」
「み、みやび……距離が、近。……これ! これ着て!」
みやびがもっと近づいてきて、ビキニのフリルが僕の肌を掠めた。近い近い近い。思わず荷物の上に投げておいた僕のパーカーをみやびに押し付ける。
「……これだからオジサンは」
ため息が聞こえた。
ああ、ご機嫌を損ねた。だけどそんな無防備な姿が目の前でちょろちょろ動いていたら、僕の理性が保てない。……それとも、それが狙いなのか。
「もう宮田さんなんて、呼んであげないんだからねっ」
みやびは拗ねたような顔をしてパーカーを羽織ると、どこかに行くこともせずに僕のすぐ隣に腰を下ろした。
「――ごめん」
「オジサン呼びでいいんなら、ずっとそうしてるといいから」
クーラーボックスから冷えた麦茶のペットボトルを出したみやびは、僕に手渡してくれた。
「まあ、これはオジサンの見てる夢なんだけどね」
「……え?」
小さく笑ったみやびが実体を持たない女の子なのかどうか、触れてみたらわかるだろうか。もし触れられたら、現実?
触れることなど、僕には怖くて出来なかった。夢ならまだ覚めなくて良い。だけど現実ならラインを超えるのを躊躇うなんて、僕はとんだヘタレだ。
「もし私に触れられたら、下の名前を呼んであげる」
みやびが僕の隣で、悪戯っぽく笑った。
おわり
本編も書きますね(にこ)。
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