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6 おかえりなさいご主人様♥
僕は今、メイドカフェなどという不慣れな場所に来ている。一人で来るのはかなり勇気を要した為、会社の同僚である星野と一緒だ。
先日みやびが、メイドカフェの割引券を僕の家のポストに入れていったのだ。なんの説明もなく、シンプルな封筒に次の日曜の日付と、可愛らしいイラストの描かれた割引券が入っていた。
これは一体どういう意味なのだろうと、割引券を眺めしばらく思考を巡らせていた会社の昼休み、社員食堂で星野に見つかった。
「おっ、宮田ぁ! メイドカフェ行くのか? 行くのか?」
「え、いや……」
「なになにー、ニ名様まで割引。いつ行く?」
「誘ってないし、行くとも言ってない」
「じゃあなんでそんなの持って唸ってるんだ?」
え、唸ってたのか僕は……。星野は僕の手からそれを奪い、ぴらりと裏面をめくる。
「みやび」
「……は? 何いきなり呼び捨てしてるんだ」
「ここに。はじっこに『みやび』って小さく書いてある。みやびちゃんここでバイトしてんの?」
「知ら……ない」
あのみやびがメイドカフェ? ツンツンツンデレ女子高生のみやびが「ご主人様」とか言ってしまうのか? 一体どこのどいつだご主人様!
そんなの心配すぎて居ても立っても居られない。星野の手から割引券を奪い返し、裏面をしげしげと観察する。確かにみやびの綺麗な文字で、小さく名前が書いてあった。
そんなわけで真実を確かめるべく、書かれた日付である今日、僕は星野とメイドカフェの入り口をくぐったのだった。
メイドカフェ❁ふらわー❁には、広く認識されている形状のメイド服を身に纏った女の子達が、僕達に向かって紋切り型の挨拶をした。
「おかえりなさいませ、ご主人様♡」
十代から二十代の女の子は、店名のとおり花のような笑顔で初来店の僕達を「ご主人様」と呼び、席に誘導してくれた。同伴した星野も興味深そうに店内を見回している。
「おい星野、あまりきょろきょろするな」
「いや、目の保養だなあ」
にこにこと席につき、差し出されたメニュー表を見るのもそこそこに、メイドさん達を眺めている。
「浮気か?」
「そんなんじゃないって。ほれ宮田、本日の目的はどうした」
そうだった。
みやびはこの中にメイドとして働いているのだろうか? そんなに広くない店内を見回すが、目的であるみやびの姿は確認できない。
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