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7 メイド服とニーハイ☕
「みーやび、そろそろ出てってあげなよお」
更衣室に顔を覗かせたメイドの一人が、にまにまと中にいたみやびに声をかけた。
「きゃわっ……きゃわわ! 一日だけでもご褒美だよみやび! 眼福〜♡」
「ねー咲、変じゃない?」
「あっ、待ってスカート。……よし、このぎりぎりの絶対領域が素晴らしい仕上がり」
「何それ?」
みやびは鏡の前でくるりと回り、自分の姿を確認している。メイド──咲は小さなテーブルに置かれたスマホの画面に写っていたくまちゃん🧸オムライスの写真に気づき、興味深そうにそれを見た。
「みやび、あのリーマンぽいおじさん……宮田さん? って何歳?」
「えっ、知らない。三十手前かな」
「宮っちの、どこが好きなのお」
「──別にっ、好きとかじゃないし。ていうか宮っちとか勝手に呼ばないで!」
鏡越しにみやびが咲を軽く睨みつけた。楽しそうにみやびを観察していた咲は、睨まれたことなど気にもせず、ふと思い出したように壁の時計を見る。
「ほらほらぁ、もう行こう? おじさん達のことだいぶ待たせてるよ」
「ねえ、本当にあたし変じゃない?」
「世界一可愛いから、もう行こ。ドリンク持って行ってあげないと!」
そろそろ食べ終わりそうなのを見計らってのタイミングだった。
「あっ、みやびがもし宮っちと結婚なんてしちゃったらさあ、……宮田みやび」
「変なこと言わないで」
「あっ婿養子に来て貰えば解決?」
「変なこと言わないでってば!」
嫌そうな表情のみやびの顔には朱が散っている。嫌なのか照れているのか。しかしこの表情は咲にとってご褒美だ。
🧸
食後にコーヒーを注文していた。くまちゃん🧸オムライスの皿が下げられ、コーヒーお持ちしますねと言われてから何分か間があった。少し遅いなと思っていた頃に、星野のスマホが小刻みに震える。
「あれっ電話だ。ちょっと外すわ」
唐突に萌え萌え空間に一人になり、僕はなんだか居心地が悪くなった。
「お待たせいたしました、ご主人様♡」
コーヒカップが載ったトレイを持ったメイドさんが僕の席に近づいて言った。さっきまで対応してくれた子と違う、というか聞いたことのある声に僕はばっと顔を上げる。
「どうぞ」
目の前に差し出されたコーヒーは良い薫りがした。そしてそれを置いてくれたメイドさんの姿をまじまじと見て、僕は思わず息を呑む。心拍数が跳ね上がるのがわかる。
「──どうぞ?」
はにかんだように笑顔を浮かべたメイドさんは、みやびだった。
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