ほころび

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そうなんだよね。小さい頃からこうと決めたら曲がらない人だった。 ホントにあのおばさんの息子だよ。 そういうところはそっくり。 洋兄ちゃんのお母さんはうちの母の小学生からのお友達なのだ。 だから、私が生まれる前からほとんど親戚のように家族ぐるみの付き合いをしている。 そういうわけで、小さい頃はお泊まりもしていたし、洋兄ちゃんと一緒にお風呂も入っていたし一緒に寝ていた。 今日は確か師長会議でまだ師長は残っているはず。 洋兄ちゃんは知っててこんな強引なことを言い出したんだろうか。 きっと、今日か明日にでも今月中の私の休暇予定が決まるんだろう。 うちの師長は洋兄ちゃんの大ファンだからきっと言いなりだ。 爽やかなくせに悪いオトコだよ。 はぁ。 でも、洋兄ちゃんのおかげで、彼の転勤の話を聞いて動揺していた気持ちが紛れた。 明日の夜は彼に会えるはずだから、きちんと直接聞いてみよう。 わたしに言わなかった理由があるのかもしれないし。 それから夜、自分の部屋で寛いでいると洋兄ちゃんから電話がかかってきた。 洋兄ちゃんは大事な用件はメールじゃなくて電話をしてくれる。 「志織、来週の金曜は夜勤だったよね。その夜勤明けの土曜にこっちを出て月曜の夜にこっちに戻るから」 「ちょっと待って。わたし日、月は日勤だったはずだけど」 「いや、そこたまたま日勤者が多いから志織は休んでいいって師長が言ってた。お前休日出勤の代休がたまってるんだってな」 「まさか…洋兄ちゃん…」 「志織は何も気にしなくても大丈夫だよ。師長がいいって言ったんだから」 「洋兄ちゃん、師長に何かした?なんて言ったの?」 「何にもしてないよ。するわけないでしょ。ただ、お願いしただけだし」 いや、怪しい。 なにか無理強いされてないか明日師長に聞いてみなくちゃ。 「車はどっちのにする?どうせ大した荷物もないから志織の車でもいいよ。でも、志織は夜勤明けだからどっちの車でも寝てていい。運転は俺がするから」 洋兄ちゃんの車は国産の高級車のSUV。 格好良くて乗り心地も抜群。 でも、最近私の車で遠乗りしてないから私のにしてもらった。 来週の土曜日か。 日程が決まったいきさつは気になるものの久しぶりの実家に洋兄ちゃんと帰れることは楽しみだ。 洋兄ちゃんとわたしが一緒に帰ったら、あっちにいる間中洋兄ちゃんちとうちの家族でずっと宴会かもしれないなあ。
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