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そんなことがあった翌週、新入院のためのシーツの準備のため、一人リネン庫で作業していると、入口に木村さんとその取り巻きの木村さんの同期のナースが仁王立ちしていた。
「あんた、山本さんの誘いをすっぽかしたんだって?」
腕を組み顎を上げるようにナナメに私を軽く睨んでいる。
やだ、怖い。
ナースって白衣の天使って言われることもあるのに、今の彼女は天使どころかただのヤンキーにしか見えないんですけど。
それに何でその事を木村さんが知っているのだろうか。
あ然としていたら
「答えなさいよっ」と更に怖い顔で凄まれてしまった。
「ごめんなさい。急変があってバタバタとしちゃって。お手紙をもらった事を忘れていて、おまけに読んでいなくて。そもそもお礼状だと思っていたんです」
は?と木村さんの目が大きくなった。
「夜勤明け連休だったので、気が付いたときには約束の日が過ぎてて。連絡先は書いてなかったし、それ以上私にはどうしようもなかったんです」
とりあえず、ばか正直に言ってみた。
「なにそれ、ばっかじゃないの?」
呆れた顔をして「もういいわ」と木村さんは出て行った。
彼女の『ばっかじゃないの』って発言は彼に対してのものか私に対するものなのかイマイチ判別出来ない。
もう1人のナースも「もったいないことしたわね」と私を馬鹿にしたようにふふんと鼻で笑って出て行った。
ただ、もったいないかどうかについては判断が分かれることだろう。
もちろん余分なことは言わないけど。
……という出来事があってから、私は木村先輩の私に対する視線が痛いことがある。
木村先輩、山本さんのことが好きだったんだろうか。
女の世界、下の者は飛び出したり浮いたりしてはいけないのだ。
特に私はまだひよっこで、仕事ができるとは言い難い。
木村さんはイケメン大好きでイケメンの患者さんやそのご家族、ドクターや研修医、男性ナース、薬剤師、事務スタッフなどなどすぐに親しげに声をかけている。
私にとって木村さんは平和に暮らすための要注意人物のひとり。
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