[フェルリキシリーズ 序] ……好き 

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   もうやめるってのを相手方が負けっ放しだからイヤだって言ってもう一度だけってことになった。  フェルにボールを回そうとするのが見え見えだから今度こそってんで相手方がフェルの前に立ちはだかる。そん時に味方が無理な体勢でボールを投げた。なんとか受けたフェルの体がバランスを崩す。無理な体勢だったヤツがそばで引っ繰り返りかけて、フェルはボールを誰かに回してからそいつを避けようとした。 「うわっ!」  その声が聞こえた時には俺は飛び出してそばに滑り込んでいた。背中から倒れそうになってるフェルの頭の下に手を突っ込む。けどちょっと間に合わなかった。頭の半分が地面についたのが分かる。 「フェルっ!」  みんなが駆け寄って来たから俺は離れた。振り返ると抱き起されてたフェルが誰かの腕に捉まって立ち上がろうとしてた。俺は部屋に戻った。  それから何回かバスケを見に行った。毎日ってわけじゃねぇ。ただ瞳と笑顔が焼きついていた。笑い声が耳に残ってた。  負けると上半身裸になってシャツを投げる。逞しい背中。日焼けしていて筋肉の動きが分かる。俺の目はいつもフェルに釘付けになっていた。でもあんだけ人気あるんだ、彼女いたっておかしくねぇ。 「あれで彼女いないなんて罪よね」 「ほんと! 優しいけどそれだけなんだもん。それでも返事はちゃんとしてくれるんだからいいけどね」  そうか、彼女、いねぇのか! でもどう見てもそっち系には見えねぇ… やっぱ、無理だよな……  そう考えてる自分に気づいてうろたえた。だってさ、俺誰かが気になって仕方ねぇっての初めてだ! どうしちまったんだ? 俺は。  特定のヤツに入れ込んじゃなんねぇってのに。  それから2日っくらいして、ドドッとノックがあってバタン! とドアが開いた。 (なんだよ、うるせぇな)  明け方までテッドとセックスしてたからだるくて動きたくなかった。目も開けずに壁に体を向けた。どうせ俺が抱くのを断ったか、抱かれるのを断ったヤツが押しかけて来たんだろう。さっさと背中から抱いてヤることヤって出てきゃいい。そう思った。 「悪い、寝てた?」  聞いたことのある声。振り返って……あの笑顔、あの瞳、あの声…… 「今日から相部屋になるフェリックス・ハワードだ」  差し出された手を呆然と見ながら俺はベッドに座り直した。 「リチャード……マーティン」 「よろしく! この部屋、思ったより広いんだね。道理で高いわけだ。でも入寮出来て良かった! アパート借りるんじゃいくらバイトしても追いつかないからね」 「なんで……この部屋、相部屋になんないはずだけど」 「どうして? 抽選があったよ。それを僕がもぎ取ったわけ。2人部屋なんだ、もう1人入ったっておかしくないだろ?」  胸が……ドキドキって、胸が………… (フェルリキ 第1部へ)  
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