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「おつかれさまです」
「おう、おつかれ」
事務所に戻ったミヨイを先輩のヤンが出迎える。
「遅かったな。例の人?」
「ええ、まあ」
農夫から魔物使いに転職したいという難題に頭を抱えていたミヨイを、ヤンも手伝ってくれていた。
優しい先輩には感謝しかない。
ヤンにはつい先日待望の赤ちゃんが生まれたばかりで、早く家に帰りたかっただろうに、普通は専門学校からしか入るルートがない魔物使いの派遣会社をミヨイと一緒に血眼になって探してくれたのだ。
「やっぱダメでしたよ、3社とも。年齢も経験不足もネックだって。なんとか頼み込んで面接まではこじつけたんですけど」
「まあ仕方ないよ、今回みたいなのは」
「でも本人は諦めきれないみたいで」
ミヨイは溜息をつく。
「農夫からのスキルアップだろ。体力あるから戦士とかが王道だけどな」
「ですよねえ・・・」
ミヨイは戦士の求人ファイルを取り出し、ぱらぱらめくる。
上は王宮直属戦士から下は酒場の用心棒まで、戦士という職業の就職先は幅広い。
職場環境上、欠員も出やすいので絶えず募集もある。
市井の一般職から専門職へのとっかかりとしては一番なりやすい職業だ。
彼の場合、戦士ならメルビーの結果を見ても適性は悪くない。
滞在期間中になんとかそっちに目を向けさせられないだろうか。
いくつか目ぼしい企業をピックアップしてからミヨイは帰り支度を始める。
ヤンを待たせてはいけないとなるべく急いだのだが、すべてが終わるころには定時を20分ほど過ぎていた。
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