第2話 変わったこと

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第2話 変わったこと

「あの頃に戻りたいなぁ。夏鈴さんと鈴羽さんどうしているやろう。」 卒業アルバムの五年生の思い出のページを見ながら、呟く少年。 その少年の名前は、朝陽和馬。今年の四月から高校生。 二人とは自然学校、六年で班が同じになった時以来、話していない。 小学校六年で同じクラスになったものの、席が近くなければ話さなかった。 一方で、席が近い頃は、四人で集まって何気ない話をしていた。 また、中学校三年間は、クラスが離れ関わる事はなくなった。 和馬は、中学校で卒業アルバムをもらったのをきっかけに、小学校の卒業アルバムも棚から取り出し、二つ一緒に見ていた。 小学校のアルバムを見てみると、夏鈴の表情は、太陽みたいに明るく、見ている側も笑ってしまう。 だが、中学のアルバムを見てみると、夏鈴の笑顔はどこにも写っていなかった。 個人写真も、無表情で別人のようだった。 和真は、驚きフリーズしてしまった。 「え?見間違えてないよな?」 文字を何度見ても、岩井夏鈴と書かれていた。 状況を理解した和真は、 「何があったんだろ?」 と心配になった。 夏鈴に、連絡しようっと思ったが、連絡先すら知らない事に気付いた。 他の方法を試そうとするけど、どれも出来ない事だらけで落胆しそうになった。 「ラインくらい、交換しとけば良かった。あっ。でも、小6の時にはスマホ持ってなかったな。あーあ。」 そんな時に、晴樹からラインがきた。 「高校合格したんだってな。おめでとー!俺も同じ高校だし三年間よろしく!」 和馬は、すぐに 「おー!晴樹も合格したんだな!高校も、よろしく〜」 と返信した。 和真は、高校も晴樹と一緒と知って、ほっとしていた。 そして、入学式の日を迎えた。 和真は、晴樹と一緒にクラス表を見ていた。 3組 1番 朝陽和真     ・     ・     ・ 3組 28番 橋中晴樹 「おー!和真と同じクラスやな!よろしくー」 「よかった〜晴樹と一緒で安心した」 そう言って2人は、教室のある校舎に向かって歩き出した。 教室に着いた頃、二人は自分たちのクラスが騒がしい事に気づいた。 「ん?和馬、俺らのクラスうるさすぎん?廊下まで聞こえてきとる。」 「なー。他のクラスしーんやのに。何かあったんかもね。」 廊下には、自分たちのクラスの声が響き渡っている。 「おーい。和馬、入るぞ!」 ぼーっとしていた和馬に、晴樹は声をかけた。 「あいよ、はいろー!」 教室に入ったら、一つの机を数人が囲んでいた。 数人は、僕らが来たのにびっくりしたからか、自分の席に座っていった。 和真は、囲まれていた机を見た。 その机には、岩石とシャープペンシルで沢山書かれていた。 (え?やばくないか?これはいじめでは…?) 和真が、その席をぼーっと見ていると人影が近づいていた。 その人が和真の前に来ると 「何か用ありますか?」     と聞かれた。 「いえ。何もないです。」   「それなら自分の席に戻って下さい。」 「あ、はい。」 和真は、自分の席に座り考え事をしていた。 (俺は、いけないものを見てしまった?これはせんせーに言うべきか?) 落書きの席の少女は、友達と思われる子に呼ばれて、席を離れ前のドアで話していた。 すると、和馬はある事に気がついた。 (ん?もしかして、夏鈴さんと鈴羽さん?えっ?でも夏鈴さんは、雰囲気が全然違うぞ!?) 和馬は、居ても立っても居られなくなったので、晴樹にLINEした。 「なぁ晴樹。前のドアで話している女子ニ人って、夏鈴さんと鈴羽さんで合ってる?」 「ん?誰それ?和馬の知り合い?」 「えー!まさか覚えてない感じ?あの小学五年の時の林間学校で、しりとり一緒にした二人。面白いなって言ってたやん」 「え、そうやったけ?頑張って思い出してみる」 「おう!頑張って思い出してくれ!そうじゃないと話が進まん、、」 「あ!分かったかもしれん!」 「マジで分かった?!思い出した?」 「あー。あのバスの子?しりとりの。やっと思い出せた。」 「あの2人であってるやんな?」 「あの2人ちゃう?1人雰囲気違うような気もするけど・・・」 「うん。そうやんなー。あとから声かけよ!」 「ああ。了解。」 このやりとりが終わった直後、チャイムが鳴った。 少女は、落書きのある机に座り、先生が来るのを待っていた。 和馬は、その様子を見ながら、(あの3年間で何があった?)と思い心配になった。 それと同時に、和馬は、(彼女をあの頃のように笑えるようにしよう。)と心の中で決意した。 ――楽しくて明るい青春が今日から始まる。――
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