真実の姿

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「何をしているんです!!」 叫んだのは王家に仕える魔法使いだった。 野茨は思わず夜露に伸ばした手を離した。 「王子! 大丈夫ですか!?」 立ちはだかる様に魔法使いが野茨と夜露の間に割って入る。 魔法使いは少し震えている様に見えた。 「この男は、殿下に呪いをかけた張本人です。 お気をつけください」 夜露を睨みつけながら言う言葉に、野茨はやはりと思った。 ここに通う様になってもう何年も経っている。 野茨ももうすぐ成人する。 流石に色々なものが目に入るし耳に入る様になる。 「この男は自分が嫌われ者だという事実を逆恨みして、殿下の生誕祭に乗り込んで呪いをかけました」 八つ裂きにされてもおかしく無いんですよ! 怒気をはらんだ声で王家に使える魔法使いは言う。 夜露の表情がぐしゃぐしゃに崩れる。 野茨はその顔を見たくないと思った。 なぜ、そんなことをしたのか聞いてみたいと思った。 一人で寂しかったのだろうか。 けれど、この塔で一人で過ごす夜露は凜としていて一人でいることへの憐憫(れんびん)は感じられなかった。 夜露の唇が小さく戦慄く。 何かを伝えようとした口は固く結ばれ、唇を噛んでいるようにも見えた。 外が騒がしい。 「警護のものを呼べ、この邪悪な魔法使いが!!」 叫ぶ声と、さあこちらへと何人もで塔から連れ出される。 何度、自分の意思であそこに言ったと伝えても取り合ってもらえない。 彼は本当にそんな邪悪な魔法使いなのだろうか。 「だって、彼は蜘蛛だって殺せなかったのに」 優しげな表情で窓の外に蜘蛛を逃してやっている夜露の顔が脳裏に浮かぶ。 せめてもう一度会わせてほしい欲しいと野茨が言っても魔法使いも大臣も父も母も許してはくれない。 どうしたらいいのか野茨には分からなかった。
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