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嫌われ者の魔法使い
昔々あるところに、ひとつの王国があった。
どのくらい昔かというと、まだ魔法使いがいた時代の話だ。
魔法使いはたくさんいて、王国と協力して、国は栄え、民は幸せに暮らしていた。
そこに一人の魔法使いがいた。
その魔法使いは痩せぎすで、瞳は黒く、肌は青白かった。
いつも黒いローブをかぶっていたため、顔をちゃんとみたことのある人はほとんどいなかった。
彼の名前は夜露と言った。
その見た目が奇妙だったからか、それとも彼の話し方が変だったからか魔法使いはいつも一人だった。
魔法使いには友はいなかったし、彼に信頼を寄せる人もいなかった。
日がな一日彼は魔法の研究をしたり魔法薬を作り、わずかばかりの対価でひっそりと暮らしていた。
彼はそれで満足だった。
* * *
ある日、魔法使いはお城に呼ばれた。
お城には着飾った貴族と綺麗なマントをつけた魔法使いが沢山いた。
魔法使いは自分の恰好を見て少しだけ恥ずかしくなる。
魔法で新しい洋服を作ろうかと思ったけれど、生憎代償にできそうなものを何も持ち合わせてはいなかった。
魔法には対価が必要だった。
「今日、皆に集まってもらったのは他でもない。
隣国との戦争のことだ」
あらわれた王様が大きな声で言った。
豊かで穏やかなこの国に隣国が攻めてくるという話はひとりぼっちの魔法使いでも知っていた。
大きな広間にざわめきが広がる。
「隣の国の大軍に勝つための手段を我が国は探しているのだ」
なにかいい知恵はないかね?
王様は魔法使いたちの方を見て言った。
魔法使い達は顔を見合わせる。
そこまで力の強い魔法使いはもう珍しくなっていた。
伝え聞く古代の魔法使いならまだしも、大軍を撃退する魔法が使える魔法使いはもう珍しくなっている。
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