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佐和ちゃんが日本に帰って来る日。
僕は大人っぽくスーツを着こんで空港まで迎えに行った。
佐和ちゃんが大きなスーツケースを重そうに引きずりながら、僕の目の前に現れた時、僕は、また一段と小さくなった佐和ちゃんを、迷わず、ぎゅっと抱きしめた。
「おかえりなさい 佐和ちゃん もう どこへも行かせない これが最後のおかえりなさいだ」
佐和ちゃんは、黙って僕の胸に顔を埋めてくれた。あたたかい吐息が、僕の胸をくすぐる。
「令ちゃん まだ19才でしょ 大学卒業してお医者さんになるまで まだ何年もかかるでしょ 令ちゃんの気持ち嬉しいけど・・・」
「佐和ちゃん その続きは また後で! 僕も夏休みだから 今、佐和ちゃんと同じ便で ふるさとに帰るよ」
僕は、佐和ちゃんの話を中断した。
僕の、真摯な情熱で佐和ちゃんの迷いを完全にコーティングするまで、無駄な気遣いさせないために。
ふるさと行きの飛行機はオレンジ色の夕陽に染まりながら、僕らを乗せて、未来へ向かって飛び立った。
佐和ちゃんは長旅で疲れていたのか、安心したのか、僕の肩に寄りかかってグッスリ眠ってしまった。
僕は、こっそり・・・佐和ちゃんの可愛いおでこにキッスした。
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