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 「はぁはぁはぁはぁ――」  少女は走る。走る、走る。暗い闇の中をひたすらに。  歳は十歳前後。黒いロングヘアに白いワンピース。その上から赤いカーディガン。首からは小さなドリームキャッチャーをつけている。  少女は追われていた。捕まれば命は無い者に。  やがて、闇に終わりが見えようとしていた。走る先に"外”の、"夜”の景色が見え始めていたからだ。  "外”だ――!!  一刻も早く、この"塔”から出なくては――  そして、"外”に飛び出した瞬間、  「そこまでよ」  その底冷えするような声が聞こえた。  少女は目を疑った。  少女は囲まれていた。  彼女を囲むのは何十体もの異形の人間達だ。服を着ていない人間達。しかし、その外見は骨の中に筋肉があるグロテスクな容貌だった。  そして、それを囲む異形たちの群れの中央にその人物はいた。  妙齢の美女だ。胸元が大きく開かれた夜色のロングドレス。髪の長さは腰どころか足下まで伸びており、その髪の間から覗く顔は美しく、しかし、圧倒的なまでの邪悪さを含んだ、暗く、陰鬱としたものだった。  「お母様・・・」  "お母様”と呼ばれた女性がはぁ・・・とため息をついた。  「・・・ドリーム、はやく部屋に戻りなさい」  ドリームと呼ばれた少女はいやいやと首を振った。  「戻りませ~ん、絶対に嫌ですぅ~」  この場の緊張感をぶち壊すような間の抜けた喋り方だった。  "お母様”は再度、はぁ・・・とため息をつく。  「仕方が無いわね。グロテスク。ドリームを捕まえて頂戴」  その命に、グロテスクと呼ばれた異形の人間達はじりじりとドリームに近づいていく。  「嫌ですぅ~いやぁ~」  間の抜けた声などお構いなしに、グロテスク達がゆっくりとドリームに襲いかかろうとして――  「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」  いきなりドリームがありったけの大声で叫んだ。刹那、彼女の体に電流が走り、同時に周囲の人々の目を焼ききらんばかりに閃光が放たれ、あたり一面を照らしつくした。  「っ!!??」  "お母様”とグロテスク達があまりの眩しさに目を覆った。  やがて――ふっと、何の前触れもなく、光は収まった。静寂を取り戻したその場を一同がゆっくりと目を開けると――  ――ドリームの姿は消えていた。  逃げられた。そう判断するのに、時間はかからなかった。  「おのれ・・・おのれぇぇぇ!!!」  "お母様”は壮絶な怒りの叫び声を上げた。
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