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「君のおかげだよ」
そんなことない。
だって、もとはと言えば亡者を逃がしちゃったの私の所為だし。
「そういう謙虚な所は好感持てますね、上司」
牛島君はちょっとオチャラけて言った。
でもね、私、思うんだ。
私のことを値踏みするだの、関わると危険を冒すだの冒し続けることになるだの言ってたけど、牛島君は正直で、篁さんに与えられた使命を全うしようとしている誠実な人だと思うんだ。
冥府への道を開けた時、私が不意に手を離してもしっかりと抱えてくれたのは事実だし、会ってまもないのにこんなに信頼できるのは、これまでこうして本音を語ってくれているから。
本音を語ってくれない人にこんなに信頼を寄せることなんてできないもの。
逆に私になら本音を語ってもいいって牛島君が判断してくれたってことだし。それってすごく嬉しいことだよ。
私たちは駅からお互いの家までの15分間、歩きながら色々話した。
これまでのこと。これからのこと。
話題は尽きない。
私達は、すっかり仲良くなった。
知らない男の子と学校への行き帰り一緒だなんて、ちょっと気が引けてたけど、もう全然平気。きっとこれからも学校からの行き帰り、いろんな話をしていくんだろう。
牛島君からの話題が、母の趣味や好きなものなど母関連の質問が多かった気がしないでもないけど。
別れ際に、牛島君が
「馬頭も君に会うのを楽しみにしているよ」
と言った。
「え? すぐに会わせてくれないの?」
「そこは有能な上司様の腕の見せどころってとこで」
わーお。
にっこりと優しい笑顔を向けながらの鬼畜発言、いただきました。
やれやれ。
まだ私への値踏みは続いているみたい。
「Guard of the HELL ―冥府の番人―」終わり。
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