野球部の馬場君

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野球部の馬場君

「日向ー! 小野日向(おのひなた)は居るかー?」 「馬場君……」 「お。居た居た。ちょっと聞きたいんだが」  放課後の音楽室。  なぜかグラウンドに居るはずの野球部員・馬場孝宏(ばばたかひろ)は、吹奏楽部のスネアドラム練習中の私・小野日向を見つけた。  身長183cm。そんなでっかい男が、野球部練習着姿でずかずかと音楽室に入ってくるのは、それだけでも目立つっていうのに。  スティックを両手に構えて、唖然として彼を見上げている私に 「次の試合も、また見に来るよな?」  と、確認した。 「えっと、まあ、……普通に行くよ?」  だって、吹奏楽部だもん。部員全員で野球部の応援に行くに決まっているじゃない。それが部活でもあるんだから。 「そっか。ありがとな。お前が来ると、その……俺、めっちゃ調子よくって、打率も上がるんだよな」 「ちょ、やめて。それ、マジ恥ずかしい。ちゃんと応援に行くから」  本当に、私も周りも誤解するからその天真爛漫で爽やかな笑顔、やめて。  思っている端から 「ひゃー。いいねぇ、ひなたん。モテモテー!」  ほら、やっぱり揶揄われた。  同じ1年7組の友達で、トランペット担当の秋田佳奈美(あきたかなみ)。サラサラの腰まであるロングヘアを左右二つに分けておさげ髪にしている彼女は、とてもフレンドリー。転校したての私に話しかけてくれて、私たちはすぐに仲良くなった。 「じゃあ、頼んだぞー!」  馬場君は、その約束(?)をするとUターン。野球部の練習しにグラウンドに駆け出して行った。 (え? もしかして、それだけの為にここまで来たの?)  高校の正門入ってまっすぐの道路。そこに先生方が停める駐車場が並ぶ。その向かいに広がるのが、野球部のグラウンド。反対の山側に教室棟。さらに山側に渡廊下で繋がっているのが講堂、体育館。そして最奥に特別教室棟があった。  その特別教室棟の3階の一番奥の部屋が、音楽室。  はるばるここまで駆け足交じりで来たのかと思ったら、さすがに (ご苦労様。馬場君はもう十分ウォーミングアップ済んだわね)  と思われた。  特別教室棟の手前に講堂があり、そこでも吹奏楽部はパート別に練習している。  私の担当するスネアドラム(小太鼓)コンサートバスドラム(大太鼓)やティンパニなど持ち運ぶのが大変なパーカッション(打楽器)のパート練習は、主に音楽室でしている。  トランペットなどの金管楽器は、比較的持ち運びしやすいので本当は講堂で練習だったんだけど、佳奈美は私とおしゃべりしてて、まだ練習に行っていなかった。  それでまた、馬場君といるところを目撃されちゃった。
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