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「どうやって転校早々、あの馬場君を射止めたの?」
「いや。射止めたとか、そんなんじゃないし」
「そんなこと言って、贅沢だぞ。馬場君、一年生ながらレギュラーの座をもぎ取ったスポーツ少年で、すごく人気あるんだから」
いや、射止めたとか、本当にそんなんじゃない。
ただ、転校初日席が隣だっただけ。教科書がまだ揃ってなくて見せてもらってただけ。その時に見ちゃった芥川さんや森さんや夏目さんの彼の落書きがあまりにもツボっただけ。私の反応に気をよくした馬場君と、それからなんとなく話すようになっただけ。
本当に誤解だから、やめて。
とても多い馬場君ファンに申し訳ないから、やめて。
馬場君にファンが多いと思い知ったのは、部活で行った野球の試合で。
1年生ながらレギュラーもぎ取った彼がバッター打席に入った途端に、湧いた歓声のほとんどは女子生徒からだった。
分かるよ。その気持ち。
あんな爽やかなスポーツ少年、応援したくなるよね。性格もいわゆる竹を割ったような性格で、四字熟語で言ったら「明朗快活」「天真爛漫」。あの笑顔向けられて「嫌い」だと言う人が居たら、ぜひお目にかかりたい。そんな馬場君だから、男子にも女子にも友達は多い。運動神経抜群で、体格にも恵まれた彼は、5月のスポーツテストでは一年生のすべての1位の記録をたたき出したって噂も聞いた。
中学の時から野球部で、地元では「将来有望なスラッガー」っていう人なんだって。高校入る前から野球部に入部が決まっていたとかも聞いた。
隣の落書きに勤しむ男子が、実はそんな凄い人とは知らなかった。
吹奏楽部の部活の一環でもあり、私はその時に試合場にいた。その怒涛のような歓声に圧倒されて、指揮者の演奏開始の合図を見落とすありえないポカをやっちゃった苦い思い出である。
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