生徒会の牛島君

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 牛島君は私の家のお向かいさんなだけ。  夏休み引っ越してきた年ごろの娘の一人ぼっちの登下校を心配した母が、たまたまお向かいの息子さんが同じ高校の制服着てたのを見つけただけ。真面目な牛島君は、これまたたまたま生徒会の仕事で夏休み期間中なのに登校してただけ。そこで母が、ぜひ一緒に行ってくれと頼んだだけ。私も方向音痴だし、まだこの辺の道も分からないから、正直、ちょっと助かるな……と思って、甘えちゃっただけ。  優しい牛島君は「いいですよ」と快諾し、今に至る……それだけ。 「いいなぁ。私も牛島君と帰りたいな」 「一緒に帰る? でも佳奈美……逆方向だったよね?」  私はちょっと考えて 「あ! 佳奈美、それって」  さっきのお返しとばかりに、佳奈美を揶揄おうと思った。  いや、違う。正確には、「揶揄おう」と思ったのは7割。  もしも、そうなら我が親友・秋田佳奈美といつもお世話になっている牛島君のハピエンの為に、この小野日向。ひと肌もふた肌も脱ぎましょう。キューピット役でもなんでもやるよ! と心の中で腕まくりしつつ、残りの3割くらいで思っていたら 「違うの、違うの」  と真っ赤になって、佳奈美が手を振る。 「あのね……最近……、気のせいかな? なんだか、帰りに誰かにつけられている気がして……さ。ちょっと怖いのよ。だから、牛島君のような人が一緒に帰ってくれると安心だなっと思って。ひなたん、いいなって思っただけで」  今度は、青くなって言う。 (理科の実験で使ったリトマス試験紙みたい)  その時は、その程度にしか思っていなかった。    そういうわけで以上、私・小野日向のモテ伝説、それ、絶対ナイから女子たち安心して! の記者会見会場からお送りしました。
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