30人が本棚に入れています
本棚に追加
吹奏楽部の小野さん
でも、そんな記者会見なんて必要ないかもしれないな。
だって私は、普通の……ううん、普通よりちょっと地味な16歳の女の子。
ざ・校則のような、髪は肩に付かないくらいのおかっぱ。生徒指導の先生の文句もつけようのないこの髪型は、中学生からずっと同じ。しかも佳奈美のような美しいストレートでもない。ちょっとくせ毛だから、いつもどこかが全体の向きと違う方向を向いている。これでも一応努力はしているんだけど、どうにも全部が揃うことはない。毎朝ドライヤーをかけてブラシで整えるのに3分は時間をかけるけど、それ以上はもう無理だと諦めて、牛島君が迎えにくるまでに間に合うよう、慌てて支度をしている。
牛島君のように特に頭が良いわけでもなく、馬場君のように特に運動ができるわけでもなく。
あ、吹奏楽でパーカッションをやってるからリズム感はそれなりにいいと思う。でも、それだってそんなに秀でているわけじゃない。
少女漫画や小説が好きで、小さい頃はよく本を読んでたから、その所為だと母は言うけど、今、目が悪くてメガネをかけている。本当はコンタクトにしたいんだけど、毎朝の髪をセットするのに3分しかかけられない私。きっとコンタクトもちゃんと片付けられないだろうから、それは大学生になったときのお楽しみってことで……嘘です。面倒が勝っただけ。私にそこまでのしゃれっ気はない。
そして身長は157㎝。これだけは平均よりもちょっと上かもと調べたら、平均ビンゴでちょっと落ち込んだ。
落ち込んでた私を慰めたのは、にぎやかな父。
「落ち込むな。いいか、日向。世の中にはマニアという人が居る」
ふむふむ。
「マニアには色んな人が居る。おかっぱマニアとか、メガネマニアとか……。それで言ったらお前は、既に二つのマニアの萌え要素を持ち合わせているんだ。自信をもっていいんだぞ」
……真面目に聞いて損した。
家族構成は、こんなにぎやかな父と、心配し過ぎて余計に大変にしちゃう母と、二つ下の中2の弟。
ごくありがちな4人家族。
まあ、こんな感じで……
私の名前は小野日向。ごく普通の女子高生は、ごく普通の高校生活を送り、ごく普通に過ごしていました。
でも、ただひとつ違っていたのは―――――。
ピロリン♪
あ、LIN○だ。
牛島君と別れて、夕飯、お風呂を済ませ、部屋着に着替えて学校の宿題していた時だから、時刻は21時近い。
(こんな時間に珍しいな。誰だろう?)
私は携帯の緑色のメッセージアプリ画面を開いた。
最初のコメントを投稿しよう!