日向の親友の秋田さん

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日向の親友の秋田さん

 秋田佳奈美からだった。 『ひなたん、こんな時間にごめん。  今日は家に一人なの。  両親揃って仕事で。  でももう怖くって怖くって、  何かしていないと気が変になりそう』  という内容だった。 「どうしたの?」  返信。  すぐに既読マークが付く。  きっと佳奈美は、携帯を抱えているじゃないかと思われた。 『部活の時に誰かにつけられているかもって言ったじゃない?』 「うん」 『あれ、気のせいじゃないかも』 「詳しく」  秋田佳奈美は綺麗な長髪ストレートをおさげにしている知的でスレンダーな女の子。誰かにつけられるってのは、自惚れでも気のせいでもないかもしれない。  フレンドリーな佳奈美がきさくに接してくれたのをきっかけに、転入生の私を警戒して遠巻きに見ていた子も 「佳奈美が仲良くできる子なら安心」  って思われたみたいで、溶け込めたんだ。  クラスも部活も一緒。  すぐに私たちは仲良くなって、メアドも交換し、「親友」と呼べる存在になった。  そんな彼女からの知らせに、不安で胸が締め付けられる。  にぎやかな父から言わせたら、彼女はおさげマニアの萌えポイントだってクリアしている。 (変な人に狙われていたら、どうしよう)  ああ、気になる。  フリック入力も面倒なほどに。  心配でたまらない私は、即、通話に切り替えた。 『ごめん、ひなたん。気のせいかも……な話なんだけど』 「ううん。大丈夫?」 『大丈夫……じゃないかも。さっきから……めっちゃ怖いよぉ』  いつも明るい佳奈美の声が震えている。 「家の中なのに?」  私が聞くと、布団を頭からかぶっているのだろうか。 『家の中だから、怖いんだよぉ』  佳奈美のくぐもった声が聞こえた。
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