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「これは…」 手渡された紙を見ると、そこには「村谷菊子展」と書かれていた。 「あなた、この方の画が好きでしょう?」 牡丹はチケットに視線を釘付けにされた。村谷菊子。当時は無名に近かった画家であり、自分自身の名前の由来でもある花「牡丹」を描く画家だ。 「ここって確か、大正時代の旧家を再建した所よね?」 李音の指さした場所には、小さく「花小路邸」と書かれていた。牡丹は小枝のような指先でその文字を辿る。 「ね、行きましょうよ。平日のお昼間に行けば、あまり人もいないわ」 「でも……」 「行きたくない?」 問われて、牡丹はチケットを握りしめた。
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