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「お、お前…どうして」
「震えてる…そんなに俺が嫌かい」
ふいに耳を食まれた。耳の殻をぬるりとした何かが這って、艶やかな音をたてる。
「…柔いね、美味しい」
低い声が耳に響き、牡丹は大きく身震いした。男は牡丹の耳をしばらく弄んだ後、次は接吻だと言わんばかりに顔を寄せる。牡丹は咄嗟に男の頬を叩いたが、男は動じることなく、むしろ清々しい様子で牡丹の唇を丹念に味わった。
めまいがするほどの激しい接吻の合間に、薄く目を開いて男の瞳の奥を覗く。
獰猛な光を宿す藍色の瞳は、翻弄される牡丹を見て、笑んでいるようにも見えた。
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