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第1話
「きゃあぁぁああああ!」
女の悲鳴が轟いた。悲鳴を聞きつけた女達が駆けつけ、襖を開ける。
同時に彼女らは愕然とした顔をしながらも、その裏で「またか」と溜息を零した。
騒ぎのおこった部屋は、寝殿造に似た屋敷の一画にある。広い部屋だが、奥には御簾がかけられていて、そこを覗くことは出来ない。しかし御簾の手前でぶるぶると震える女の背は見てとれて、その横には砕けた花瓶に、水、活けられたはずの花が無残に散っていた。
「お、お嬢様…申し訳ございませ」
「黙れ!もう二度と牡丹の部屋に入るでない!」
御簾の向こう側からでもなおよく通る声に、女達は怯え震えた。部屋に一歩でも入れば、きっと罵詈雑言を浴びせられるに違いない。
そこに散らばる花瓶の欠片を、水を片付けなければならないのに、誰も部屋の中には入れない。誰も許されていないのだ。
誰も、部屋の主から部屋へ入ること許可されていない。
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