第2話

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「んー…泣かない、泣かない」 「む…ぅ、う」 「…よしよし、良い子、良い子」 男は牡丹の耳を甘く食みながら、彼女の細い腰に腕を回す。そんな2人の様子を眺めながら女はいよいよいたたまれなくなり、2人に声を掛けた。 「2人の世界に入っているところ、悪いのだけど…。そろそろ私を思い出してくれないかしら」 女の問いかけは、男にも牡丹にも届いているはずだった。けれど男は女の問いには答えず、牡丹は無我夢中で男の肩に噛みついている。女はついに理解した。目の前で乱れる2人が、異常なほど互いしか見られなくなっていることに。ついさっき女の色仕掛けを足蹴にした男と、今目の前で1人の女を掻き抱き、獣のように興奮している男は本当に同一人物だろうか。と、女は衝撃を受けざるを得なかった。
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