65人が本棚に入れています
本棚に追加
「聞こえぬのか?早くこの部屋から…いや、屋敷から出ていけ!」
御簾の向こうであがる絶叫に近い声に、女達はこれはいよいよまずいと心中で叫び、彼女が傍に寄ることを許した老女を呼びに向かう。
「ああ、霞様!お、お嬢様が」
霞と呼ばれた老女が顔をあげた。女は部屋に入るなり、早口で事の次第を説明した。霞は言いたいことをすぐに察して、女の言葉を遮る。
「そんなに慌てては駄目よ」
「し、しかし」
「あなたが慌てても、仕方のないことです。私が向かいますから、あなた達は仕事に戻りなさい」
霞は叱責めいた声で宣い、彼女に下がるように命じた。
最初のコメントを投稿しよう!