第1話

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「聞こえぬのか?早くこの部屋から…いや、屋敷から出ていけ!」 御簾の向こうであがる絶叫に近い声に、女達はこれはいよいよまずいと心中で叫び、彼女が傍に寄ることを許した老女を呼びに向かう。 「ああ、霞様!お、お嬢様が」 霞と呼ばれた老女が顔をあげた。女は部屋に入るなり、早口で事の次第を説明した。霞は言いたいことをすぐに察して、女の言葉を遮る。 「そんなに慌てては駄目よ」 「し、しかし」 「あなたが慌てても、仕方のないことです。私が向かいますから、あなた達は仕事に戻りなさい」 霞は叱責めいた声で宣い、彼女に下がるように命じた。
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