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「お前達は、仕事へお戻り。説教は後で」
「は、はい!」
喜々として走り去る女達に、霞はため息を吐いた。立ち止まっていた足を動かし、声の響く方へと向かう。
部屋の前まで辿り着くと、開いたままの襖の奥で風に揺れる御簾から、絹糸のような黒髪が覗いた。
「お嬢様…霞でございます。入ってもよろしいでしょうか」
「…かすみ」
「失礼致します」
襖を横切り、霞は一礼して御簾をめくった。広がる黒髪。色鮮やかな打掛、そして病的なまでに白く美しい顔。四肢を投げ出し、茣蓙の上に横たわった少女を、霞はそっと抱き起した。
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