第10話「勢力図その1」

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第10話「勢力図その1」

小牧城より、二回り以上小さな岐阜城。 山の上に建てられたため、美濃の景色一望できる。 その天守閣から、小太りの中年男が、下を眺めていた。 顔は下の下。ちっちゃい目に浅黒い肌。 髪は元気がなく、頭にぺったりしてて不潔な印象の男だった。 「チ……」 川幅が広く、敵が攻めにくいと言われていた木曽川は、あっさり攻略され、岸の近くには、着々と小屋が建てられていた。 「くっそぉ……信長がもうここまで来てるぞ!しかも、橋まで架けはじめてやがる」 「落ち着いてください。侠玄(きょうげん)様」 侠玄の隣には、白い肌に、猫目の可愛らしい顔をした女性がいた。 桃色で無地の着物を着ている。 和服ではわかりづらいはずのおっぱいはかなり大きく、帯の上にのっていた。 にも関わらず、華奢で時折、ちらっと見える足首は細かった。 侠玄の腕に両腕を絡めると、下から見つめる。 「大声を出しては、また心臓が痛くなっちゃいますよ」 「おぉ、そうだった。でも、たま……」 「侠玄様、焦らなくても大丈夫です。外では、小介(しょうすけ)殿と、平尚(ひらなお)殿が守ってるじゃないですかぁ。織田も今、ゆっくり準備しているところですから。純一殿に援軍要請されたんでしょう?いつごろ到着されるのかしら?」 「あぁ。1週間後、こっちに着くようだ」 「け、結構かかりますね……」 「戦するのに、城ならばいいだろうと、女をたくさん連れて来るからな。準備がいろいろかかるらしい」 「は、はあ」 「そしたら、織田が準備整う前にやっちまうぞー。たまはこっから見ててね。俺の活躍」 「はーい。楽しみですわ」 部屋の中に戻る侠玄の後を、たまもついていく。 いつもの座布団に座ると、たまもその隣に座り、体をこてんと傾けようとしたとき、はっと横を見た。 「うわ、そこにいたの。くろみ」 柱の陰と一体化するように、黒い服を着た男が立っていた。 細く、そして、存在感が恐ろしくない。 座った侠玄に、お茶すらを出そうともせず、ただ立っているだけだった。 「いつものことながら、存在感がなくてびっくりします」 「……」 くろみは黙ったままお辞儀をする。ただの相槌なのか、すみませんという意味なのか。 「そのうち慣れるよ、たま」 「くろみはずーーーっと侠玄様のおそばにいるのに、お世話を何もしないの?」 「……」 こくんと頷く。 たまは引いたような顔で眺めた。 「たま、気にしなくていいぞ。いざというときは役に立つだろ」 「だといいんですけど……。あ、で、話の続きなんですけど、純一殿と、和典(かずのり)様、それだけだと戦力不足では?もっと、人雇いましょうよ」 たまは脚を崩し、肩にこてんと頭をのせた。 侠玄の手がぬっと伸び、たまの尻の下に手を差し込むと、もみもみした。 「しかし、先日も忍者を雇いまくって、もう来年の予算が……」 「今、払わなくては、今も過ごせません。織田を疲弊させて、伊勢湾を手に入れれば、交易で潤いますよ」 「そうだったな」 「三島殿が殺されそうって、私の言うこと、よく当たりません?」 「当たる。たまは頭いいのー」 たまは侠玄の胸に頭をうずめると、なでなでされる。 「たまは挟玄様だけには、生きてて欲しいのです」 「たまは本当に可愛いんだよなぁ」 「えへへ。ねぇ、侠玄様、二人っきりで……」 「たま」 重い、少し皺がれたような低い声がした。 背の低い、妙齢の女性が立っていた。 侠玄の乳母だった。 「殿を狙うのはやめなさい。お前の仕事は千代麻呂(ちよまろ)様のお守りだろ。話をややこしくするんじゃない」 「はーい」 千代麻呂(ちよまろ)は侠玄が40なって生まれた子どもだった。 まだ1歳だった。 「おやつの準備は済んでるのかい?おねしょした布団を干しておくように言ったけど、終わってるんだろうね?」 「はい。はい。はーい。侠玄様、また来ますね」 たまは笑った顔のまま適当に返事すると、部屋を出た。 侠玄は声を出さずに笑顔で手を振り送り出す。 たまは廊下から、城下の眺める。 万が一、攻め込まれてもいいように、大工たちが塀を修理しているところだった。 「んっ……んー……んん……ん……きもちー………………なに?」 昨日と同じ、広いお座敷の部屋で、佳秋が仰向けで寝ていた。 薄目を開けると、自分の下半身に、四つん這いになり、顔を埋めている少年がいた。 「え、あ、……み、御影!?」 「おはよ。佳秋」 顔を上げ、舌で唇をぺろりと舐めると、にやぁと笑う。 その口からは勃起ちんこがこぼれ出て、ぼよよーんと跳ねた。 自分のだ。下半身がスースーする。 「な、何してんの?」 「信長に用があって、来たら、佳秋が寝てて、立派に朝立ちしてたから、食べちゃった」 「疲れてんのに、たっちゃうのはなんでだろうな……」 御影は上等の着物、帯、かんざしを身に付け、まるでお姫様のようだった。 すべて織田軍の男たちからの貢ぎ物だ。 「おちんこ、はいしゃくぅ♪」 御影は佳秋の上に乗ると、おちんちんの根元を自分で持ち、その上に腰を下ろす。 「んっ……!あぁぁー……」 佳秋も快感を堪えるように、顔をしかめた。 「……んっ……きっつ…………。そういえば、おしりに入れたの、久々だな。うぉ……ぉ……」 御影は佳秋の上で、腰を前後にくねくねさせながら、しゃべり続ける。 「佳秋ー。聞いたぜ。信長に散々抱かれてきたんだろー?」 「え、言葉責め?なにこのプレイ。んー、どっちかっていうと、信長様の父上の信秀様に抱かれてきた期間のが長かったかな」 「へー。でも、いい年こいて、信長に求められるなんて、相当お気に入りだよな」 「あはは……なんて返せばいいんだ……」 「いいなー。俺も信長とヤりたいぜ」 「どうだろう。信長様はドSだから、あんま御影と相性合わないんじゃない?御影そういうの、好きじゃなさそう」 「たしかに。ハードなのは、やだけど……イケメン見ると、ちんこが疼く」 「性欲旺盛だなぁ。でも、俺のちんこを入れてくれて嬉しい」 「そうなのか?」 「最近、長男がいい年頃になって、モテモテでさ、ちょっと寂しかったんだよねー。俺の時代終わったのかって」 御影が腰を止め、佳秋の腹筋に手をつき、前のめりになる。 「えー!?おれは佳秋、味が出て来た感じでめっちゃ好きだなー。歳と経験重ねて培った包容力?と色気みたいな」 腹筋を使って、佳秋は上半身を起き上がらせると、御影の背中に手を回した。 佳秋の上に御影が乗っているので、向かい合う形になる。 「御影ちゃん。いい子だね」 「へへ」 「父上、朝ごはんいります?」 部屋の入り口に、蘭丸が食事を持って立っていた。 寝起きの佳秋とは違い、きちんと身なりを整えている。 「うわっ!蘭丸いたの!?」 「ここ置いときますねー」 「…………」 佳秋は微動だにしなかった。 御影の着物の裾は太ももを覆っているので見えてないはずだ。 「ん……」 佳秋が僅かに顔をしかめた。 御影がニヤニヤしながら、服の下で佳秋のものをきゅぅぅと締め付けていた。 蘭丸が笑顔で振り返る。 「あ、バレてます」 「!?」 「蘭丸、俺のご飯は?」 「御影のは、食堂にあるよ。みんなと一緒に食べよ。染五郎は、今お風呂入ってる。終わったら来てねー」 「ほーい」 蘭丸はそのまま部屋を出て行った。 食堂で蘭丸、七之助、坊丸、御影、染五郎たちは仲良く朝食を食べていた。 今日の献立はお粥と、梅干しとたくあん、ほうれん草のお浸しに、鮎の佃煮だった。 染五郎は食堂の大きさと、人の数と、食事の豪華さに圧倒されながらも、七之助の質問に答えていた。 「俺は下級武士の生まれだったんだけど、母か意識高い系で、いろいろ勉強させてくれたんだ。で、正興様とは家が近くて、一緒に戦の手伝いとかする集団の中の一人だったんだけど……」 食堂を利用する男たちがわざわざ、染五郎と御影の前を通り、顔をじろじろ見ながら帰っていく。 「正興様が出世されたとき、なぜか、寵童に俺を選んでくれて……」 「じゃあ、嬉しかったね」 「う、うん……俺なんか見ててくれたんだって」 「もともと正興殿は、染五郎ゾッコンだったんじゃない?仕事忙しかった時とか、城に泊まればいいのに、わざわざ自分の実家の方へ、ルンルンで帰っていくから、これは何かあるなと……」 「べ、別に、そんな、ないよ。ゆっくり話しできたのも、寵童に任命されてからだし……。でも、正興様は優秀だったから、俺は、正興様の近くで働きたいと思ってたよ」 七之助が頬に手を当て、うっとりとつぶやく。 「純愛、だね」 「え!?」 染五郎が顔を真っ赤にする。 他の男の子たちも深く頷く。 「勃起案件」 「はぁぁぁ、興奮してきた……!」 蘭丸が身を乗り出して、染五郎をのぞき込んだ。 「え、じゃあ、正興殿と共闘の鍛練始めたの最近なの?」 「んと……3ヶ月前、くらいから……」 「たった3ヶ月!?息ぴったりだったよ!」 「純愛、だね」 「相思相愛ってやつか」 「え、普通はどれくらいなの?」 「普通というか、僕は8歳の頃からだから、4年くらいかな。蘭丸はもっと早いでしょ」 「んー、ちょくちょく信長様には指導してもらってたけど、本格的に鍛錬を始めたのは7、8歳くらいだよ」 「……なんか、俺、場違い……みんな英才教育受けたエリートなのに……」 七之助が慌てて手を振った。 「蘭丸はエリート家系の生粋のエリートだけど、僕は……」 「お前ら!食べ終わったんなら、食器を下げろ!洗い物が進まないだろ!」 頭上から年上の小姓がの声が降ってきた。 よく見ると、いつも厨房で大声を上げている副料理長の青年だった。 「ごごごごめんなさい……」 「はーい。佃煮おいしかったです」 蘭丸が副料理長に笑いかける。 副料理長はまんざらでもないように顔を赤くして、厨房へ消えていった。 蘭丸に続いて、食器を下げに、染五郎たちもついていく。 「染五郎、今日も泊まってってね!朝まで語りつくそう!」 「そうだね!まずは初夜から!!」 「えぇー…」 食事を終えた蘭丸たちは座敷へと移動した。 蘭丸が衝立に、大きな紙を貼る。 そこには、近畿から東海にかけての地図が描かれていた。 衝立の前に蘭丸が立ち、向かい合うように、染五郎たちが机を前に座る。 「はい。では、染五郎が寵童になり、御影とも長期契約したことですし、改めて、信長様の野望と今の勢力図を確認したいと思いまーす」 御影の契約更新の話を初めて聞いた坊丸が聞いた。 「御影ちゃん、長期契約っていつまで?」 「1ヶ月」 「えー。たった1ヶ月?全然、長期じゃないじゃん」 「だよなー。坊丸のこともっと可愛がりたいのに」 「うちもそんなにお金がないの。はい。じゃあ、始めますよ」 蘭丸が指示棒を手にとる。 染五郎は机に手帳を広げ、メモの用意をした。 「信長様の目的は天下を統一すること。事実上、今いる、日ノ本の大名すべてを支配下におくことです。なぜか。それは戦をなくし、平安の世を作るためです」 蘭丸が真剣な顔つきで告げた。 坊丸、七之助はふむふむと、染五郎は真剣な顔で、御影は頬杖をつきながら聞いていた。 地図には名古屋一帯から知多半島にかけて赤く染まっている場所があった。 ここが信長が治めている尾張国だった。 比較的平野が多く、農業が発展し、港があるため経済盛ん、日ノ本の東西を結ぶ交通の要所でもあった。 指示棒は尾張国の北をさした。 「っで、今、攻め落とそうとしているのが、美濃の斎藤。今、ものすごいチャンスで、当主の斎藤 侠玄(さいとう きょうげん)の愚策に若い家臣たちはどんどん離れていってます。木曽川まで攻略できましたし、あとちょっとです」 今度は尾張国の東、緑色に塗られた広大な土地をさす。 「で、ときどき、バチバチしてるのが、駿河国の今川です。こないだも少しやりあって、三河らへんを取り返しましたが、いつ何が起こるかわかりません。当主の義元は、それはそれはもう変態と聞きます」 「こわ……」 指示棒はそのまま、尾張国と駿河国の間にある小さな領地をさす。 「で、三河国。今、家康殿ががんばって整備しています。家康殿は小さいころ織田家に人質として暮らしていたので、信長様の……弟?こぶん?みたいな、関係です。美濃攻め落とし終わったら、正式に同盟を結ぶ予定です」 今度は尾張国の西をさす。 「このへん山ばっかなとこを支配してる伊勢国の北畠。ここは体制もしっかりしてて、なかなか難しそうです。好戦的ではないように感じますが、軍事力は高いです」 尾張国にちょこっと隣接し、海に面する細い領土をさす。 「桑名国の赤松。ここは、先日、当主が戦で死んだという報告を受けたので、継いだのは17歳のひよっこ。狙い目です」 「っで、近江国の浅井。今調査中です。覇権争いの内乱が起きそうなので、もう少し、混乱させたいところです」 蘭丸の顔がより真剣になる。 「そして、一番イラつくのが、仏教勢力の大坂の本願寺。各地の農民の反乱を指導、支援してるのが、こいつらというのはわかってるんですが、組織の構造が複雑でまだわかっていないことが多く、正直どう対処しているか悩んでいるところです」 蘭丸は御影を見た。 「御影、なんかいい情報持ってる?」 「タダで情報やれるかよ」 御影はあぐらで、後ろに体を倒し、畳に手をついて聞いていた。 「じゃあ、これ見せてあげる」 蘭丸が風呂敷をほどくと、中には蘭丸たちと同じサイズの紋証(もんあかし)があった。 「じゃじゃーん。御影の紋証」 織田の家紋、織田木瓜(おだもっこう)と、白ユリがあしらわれていた。 御影は頬染め、目を輝かせる。 「おぉぉぉ!可愛い!」 「この先、御影に伝令お願いすることもあるだろうからって、信長様が用意してくださったんだよ」 「つけて!つけて!」 御影は着物の裾をはだけさせると、太ももに縛った。 立ち上がり、裾を広げた状態で、周りに見せびらかす。 「ふふーん。どーだ?」 「御影可愛い!」 「似合ってるよ」 「白ユリって美人な御影っぽい」 「白ユリは御影にしか着こなせないね!」 御影はめちゃくちゃ機嫌がよくなったのがわかった。 「えへへ。実はさー。俺らも本願寺派のことはよくわかってねーんだよな。でも、可愛い男子を売買するネットワークはすげぇらしいぜ」 「売買……」 坊丸は少し引いた顔をした。 「貧しい農村で男の子を安い金で買うか、さらって、本願寺の幹部に売ってるらしい」 「お寺も女人禁制だもんね」 「お前らも気をつけろよー。そのへん歩いてるだけでマジで捕まるぞ」 「こわ……」 手元が暇なのか、御影は隣に座る七之助の髪の毛を三つ編みにし始めた。 「てゆーか、天下統一して本当に平安の世が来たとしたら、俺ら忍者は仕事激減なんだけど」 「この戦乱でがっぽり稼いで、引退したあと、悠々自適に生活すればいいじゃん」 「なるほどな」 編み終わった髪を、ピンで留める。 反対側の髪も手にとる。 「まぁ、周辺はざっとこんな感じかな。ホントはもっといるんですが、ややこしくなるので、割愛します。何か質問ある人ー?」 今まで無駄口を叩かず、真剣に話しを聞いていた染五郎がはっと手を上げた。 「逆に、今一番うちを狙ってるのは?」 「いい質問ですね」 「信長様のお考えは近江国です。港が欲しいんですよね。ずる賢く、正面突破的な戦はせず、諜報員にやらせたり……うっとうしい。あとは、ちらほら雇われた忍者が信長様の暗殺企てたり、復讐にしきたり、ぶっちゃけ、ゆっくりえっちしてる余裕もないくらいです」 染五郎が困った笑顔で返す。 「とりあえず、美濃を押さえ、次は各地の農民一揆勢をおさえつつ、周辺国を制圧する」 染五郎が大きく頷く。 「天下統一がんばろー」 「おー!」 蘭丸が笑顔で、右手をぐーにして上に上げると、七之助と坊丸も笑顔で手を上に上げた。 染五郎も筆をおいて、やや小さめに手を上げる。 ただ見ていた御影は髪が仕上がった七之助に、彼岸花の髪飾りをさしながら、半笑いで言った。 「いやいやいや、道のり長くね?天下なんて統一できるわけないじゃん」 「じゃあ、次は城内を案内するね。まずは武器庫かな」 蘭丸たちは城内の広い廊下を並んで歩いた。 こうして見ると、1才年上の御影と染五郎が、蘭丸より、やや背が高い。 その5センチ下に坊丸の頭があった。 板張りの部屋を、可愛いお尻を突き出し、少年たちが雑巾かけをしている。 「邪魔邪魔」 「どいてどいて」 「ごごごごめんなさいっ!」 荷物も持って、慌ただしく走る小姓たちが、七之助に肩をぶつけ走っていく。 「うぅ……信長殿の小姓たち、いつもピリピリしてて怖い……」 「なんか、戦場より戦場……」 染五郎がやや怯えた表情で小姓たちを見つめていると、突然、お尻に感触を感じ、声を上げた。 「ひゃっ!」 染五郎の横を18くらいの少年たちが歩いていく。 「可愛いー」 「正興殿の寵童だってさー」 「いーなー」 少年たちはチラチラ振り返りながら歩いていく。 蘭丸は、にこにこした顔のまま言った。 「ああいう挨拶なんだ」 「うぅ……怖い……」 廊下の先には広い空間があり、戸のついたロッカーが100ほど並んでいた。 「っで、ここが信長様の小姓たちのロッカー。お手紙、小包はここに入れてね」 蘭丸と名札がつけられたロッカーの扉を蘭丸が開けた。 「え!?」 染五郎がひきつった顔を見せる。 中は墨で殴り書きされたように、落書きされていた。 『蘭丸死ね死ね死ね』 『ブス』 『くそびっち』 『性格が悪い。』 『落馬して、金玉打って死ね』 唯一、おいてあった羽織はビリビリに破られ、追加でごみが捨てられていた。 「こ、これは……」 染五郎が困惑する横で、御影があっはっはっ!と大爆笑していた。 七之助が苦笑いしながら答える。 「アンチ蘭丸集団の嫌がらせだよ」 「だから、蘭への手紙や小包はここには入れず、蘭と坊丸専用の部屋に置いてね」 蘭丸は先ほどと変わらないにこにこした顔のまま言った。 「わ、わかった……」 「ぷぷぅっ。やっぱ、お前、他の小姓たちから嫌われてんだな(笑)」 御影は涙を溜めるほど笑ってる。 「まぁ、信長殿のお気に入りで特別扱いだしね。妬まれちゃうよね」 「じゃあ、次、武器庫案内しまーす」 長い渡り廊下を歩くと、また大きな部屋が見えてきた。 御影は未だに背中を丸め、笑っている。 「お前、実は友達少ないだろ(笑)」 「しっ!静かに!何か聞こえる……!」 蘭丸たちが耳をそばだてる。 「やっ、あっ、ん……!」 中から男の子のいかがわしい声が聞こえてきたが、蘭丸は構わず扉を開けた。 「ひっ!ら、蘭丸っ!?」 立って棚に手をついていた少年、といっても、背がすっかり伸びた17才の男の子と、そのうしろに背の高い細身の青年がぴったりくっついていた。 直接見えないが、この体勢はどう見ても、後ろから挿入している。 「あ~、可愛い子たち来た~」 「見んな……!」 「おお~、締まる締まる」 恥ずかしそうに、目を閉じる男の子のあそこが、きゅうぅと締め付ける。 染五郎は見ちゃいけないと思ったのか、視線を反らし、床を見ていた。 蘭丸は変わらない、にこにこした表情のまま、手を向けて紹介する。 「いれてる方が、秀平(しゅうへい)さんです。抜いてあげれば、めんどくさいことも引き受けてくれますよ」 「可愛い男の子に限るけどね」 「で、いれられてるのが寿々晴(すずはる)さんです」 「どっちもイケメン……」 顔を赤くした寿々晴が、秀平に振り返る。 「秀平さん、一旦抜いてくださいよ」 「やだぴょーん」 「寿々晴さんはまだ小姓扱いなんだけど、戦地にはよく来てくださって、雑用を手伝ってくださいます。こちら、正興殿の寵童の染五郎と、期限付きで契約した御影」 「よろしくお願いいたします」 染五郎が丁寧にお辞儀する。 「よろしくー」 「こんな紹介のされ方いやだ……」 「小姓扱いだから……とかって、何か違うの?」 「小姓扱いのまま戦地に来れるのは、ある程度自分の身は自分で守れるほど実力があって、優秀で、顔もいい、信長様が信用してる人間しか無理かなー。後方支援とか、戦後の遺体の処理とかで人手が欲しかったら、誰でも行くけどね」 「寿々晴優秀だからなー」 「そ、そんな、こと、ない……ん……」 「で、秀平さんは何をお願いされたんですか?」 「寿々晴、明日、実家帰りたいから、警備の当番変わってだって」 蘭丸は秀平に突かれている寿々晴の顔を見た。 「寿々晴さんは、ご実家は有松でしたよね?日帰りで行けるのでは?」 「あっ、ん……母が……びょうきで……あぁっ!」 寿々晴は力が入らなくなり、腰がどんどん下がる。 秀平が寿々晴の腰を持ち直す。 「ほら、寿々晴、ちゃんと立って」 「は、はいっ……!あっ……、母の面倒みたくて……!」 「そうだったんですね。存じませんでした。早くよくなるといいですね」 「う、ん……ぁああっ!」 寿々晴が甘い声をあげ、褌を掴むと、自分のものを包み込んだ。 びくびくと体を震わせる。 「寿々晴さんもイったところで、次、書庫案内しまーす」 「あれ?お前らも混ざんないの?」 「今朝しましたから」 「ぼ、ぼく、むらむらしてきちゃった……」 「可愛い顔して、性欲強っ!」 蘭丸たちはくっちゃべりながら、武器庫を後にした。
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