50女子大生の会話

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「年寄りは引っ込んでいてください。駒沢先生」 「そうそう、誰もあんたなんかおよびじゃないの」 「こ、駒沢先生、どうしてここに?」  私とジャスミンは嫌な顔を隠そうとせずに、駒沢を睨みつける。綾崎さんは駒沢信者なので、会うことができて驚きと喜びを露わにしていた。駒沢は、私たちの反応を面白そうに眺めながらも、私たちの席から離れようとはしなかった。あろうことか、私の隣の席に座ってしまう。昼食は食べ終えたのか、缶コーヒーを片手に話し始めた。 「仮にも、私はあなた方の大学の先生なのですから、そこの二人は、その嫌悪に満ちた態度を見せるのはやめなさい。ここで会ったのはただの偶然ですが、良い機会ですので、一つ、面白い話を聞かせてあげましょう」  ちなみに私の正面にジャスミンと綾崎さんが座っている。以前に私の隣の席を取り合ってもめたため、妥協案として正面に座ることにしたようだ。 「もったいぶらずに、さっさと結論を言ってください。大学生は暇な時間がなくて忙しい身なんですよ」  今日で大学の前期の授業が終わりなので、時間はあるのだが、こいつと一緒にいる時間は短い方がいい。不機嫌な表情を顔に載せると、駒沢は残念そうな表情をしていたが、すぐに本題に入ってくれた。 「実は、あなた方の後輩にあたる『向井陽菜』が退学を決めたようです」  告げられた言葉に私たちは息をのむ。向井さんとは、荒川結女の見舞いに行った病院で会って以降、顔を合わせていない。大学の敷地は広いが、同じ文系で学部も同じはずだったのに、テスト期間中に会わなかったことを疑問にも思わなかった。
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