51私大好き人間

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51私大好き人間

「向井さんが、退学、ですか?それは悲しいです。せっかく、親しい後輩ができたのに……。でも、大学を続けるのも辞めるのも、本人の自由ですからね」  この場で唯一、駒沢に好意を抱いている綾崎さんが、向井さんのことを純粋に寂しがっていた。彼女は私やジャスミンが特殊能力を持っていることを知らない、ただの一般人だ。駒沢も能力を持たない一般人だと思うが、何かと私の能力について言及してくる。私が能力者であり、不老不死体質だという決定的証拠がないため、いまだに私に付きまとってくる迷惑な男である。 「あなた方の反応を見る限り、退学理由を知らされていないようですね。ですが、朔夜さんに関しては、何か退学のきっかけになるようなことを知っていそうですけど」 「そ、そうなんですか?」 「綾崎さん、ちょっと黙ってくれる?駒沢先生、蒼紗が知っていたとして、あなたには話しませんよ。先生だからと言って、他人の個人情報を知ろうとすれば、痛い目に遭いますよ」  ジャスミンにはいつも助けられてばかりいる。私が反論できないでいたら、助け舟を出してくれた。他人の個人情報を大学教諭だからと言って、話す必要はない。 「そう来ましたか。まあ、彼女の退学についてはこちらで調べることにします。ところで」  先日のビル火災について、何か知っていることはありませんか?  私たちから向井さんの退学理由を聞けないとわかると、男はすぐに別の話題を振ってきた。これもまた、私の口からは説明したくはない案件だ。いい加減、この場にいるのも嫌になってきた。ちょうど昼食も食べ終えたことだし、バイトだからと言って、帰ってしまおうか。 「ブーブー」  そんなことを考えているうちに、私のスマホが着信を告げる。これはチャンスとばかりに食堂を離れる。着信相手は、今まさに話題に上がっていた人物だった。
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