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52私は幸せですよ
『お邪魔します』
二人を自宅に招くことにしたが、ちょうど、九尾たちは家を留守にしていたようだ。家には誰もいなかった。彼らと鉢合わせにならなくて良かった。ジャスミンはともかく、綾崎さんと彼らを合わすのはあまりよろしくなかった。
彼女たちは恐る恐る玄関から上がっていく。何を緊張しているのかわからないが、妙におどおどしている二人をリビングに案内する。
「それで、ジャスミンは、どうして電話を勝手に切ったのですか?」
彼女たちは客人になるため、ソファに座らせる。とりあえず、先にジャスミンに電話の件について尋ねることにした。ジャスミンは目を泳がせて、何を言おうか迷っているようだ。
「ええと、その、今回の件って、結局、む、向井さんが発端だった、訳じゃない?だから、これ以上、蒼紗と関わらせるのは、ま、まずいかなと」
ジャスミンは、私が向井さんと通話していることに気付いていた。ということは、最初から通話を聞いていたのだろうか。気配がまったくなかったが、彼女なら難なく盗み聞きはできそうだ。
それにしても、いまだにジャスミンも綾崎さんも挙動不審で落ち着きがない。まだ、私からは怒りのオーラみたいなものが出ているのだろうか。
「はあ」
ともかく、親友として、彼女は私を心配してくれているのはわかった。しかし、その行動が悪い方向に進んでいるのは良くない。勝手に他人の電話を切ってしまうのはダメだろう。きつく言っておかなければならない。ため息をついたのがいけなかったのか、二人がびくっと肩を震わせる。
「あ、あの、でも、佐藤さんの言うことも、まちがって、はいません」
別に私はジャスミンたちを脅しているわけでも、殺そうとしているわけでもない。それなのに、綾崎さんが泣きそうになりながらも、ジャスミンのことをかばいだした。
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