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ジャスミンは自分で犯人を見つけて懲らしめたかったようだが、それは無理な話だ。犯人である「荒川結女」はもう、この世にいないのだから。
「蒼紗さんは、その犯人と知り合い、だったんですか?泣いていますよ」
「はあ。話さなくてもいいこと口にするからそうなるのよ」
綾崎さんの声に慌てて自分の目元を触ってみると、濡れているのがわかった。荒川結女のことを少し思い出しただけなのに、この状態とは。自分の心と身体の感情の不一致に呆れてしまう。
「この話はこの辺にしましょう。蒼紗がそう言うんだったら、私たちにいたずらはされないってことでしょ。だったら、もっと楽しい話題をしましょう。ほら、今日から夏休みなんだから、一緒に遊ぶ計画でも立てるとか」
「それはいいですね。一緒に海とかお祭りとかに行きたいですね。蒼紗さんの水着姿も浴衣姿も見てみたいです!」
「綾崎さん、たまにはいいこと言うわね。そうそう、夏休みなんだから、イベント盛りだくさんでしょ。何からやっていくか話し合うわよ!」
まったく、この二人は私の気も知らないで勝手なことを言い始める。しかし、そのおかげか、すぐに目元が渇き、新たに濡れることはなかった。
さようなら。私の幼馴染。私は彼女たちと一緒に居られて幸せですよ。
目をつむり、軽い黙とうをささげる。
『蒼紗(さん)』
「寝ていませんよ。それで、私は夏休みに何をさせられるんですか?」
二人の私を呼ぶ声が聞こえて目を開ける。そこには笑顔の二人の親友の姿があった。
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