53上司の言葉

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 死神のくせに、いつまで人間のふりをして、この塾で働くつもりなのだろうか。嫌なことを聞いてくる上司である。とはいえ、目の前の男は、私の知らない彼女の情報を持っているかもしれない。  大学の前期の授業最終日に、向井さんから電話がかかってきたが、ジャスミンに勝手に切られてしまった。その後、彼女たちが帰宅した後、かけなおしてみたが、何度かけても「電源が入っていないか、電波の届かない場所にあります」という電子音が流れるだけで、一向に向井さんにつながることはなかった。 「向井さんに電話がかからないのは、どうしてでしょうか」 「さあ、僕にはわかりません」 「オレには何も言えない」 「さて、誰のことを言っているのやら」  その日の夜、ふらりと家に帰ってきた九尾たちに尋ねてみたが、理由を教えてもらえなかった。彼らは、向井さんに関しての情報を持っているみたいだが、話すつもりはなさそうだった。 「何を考えているのか知りませんが、彼女についてはもう、関わらない方がいいと思いますよ」  思考の海に沈んでいた私を現実に引き戻した車坂は、なんでもないことのように軽い口調で彼女について言及する。関わらない方がいいということは、彼女の身に何かあったということだ。曾祖母のことで、彼女の身にも不幸が訪れてしまったのだとしたら、あまりにも理不尽だ。
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