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「そうですねえ。なんと言いますか、彼女の家は今、何者かに追われているようでして、夜逃げ?状態で連絡がつかないらしいですよ」
「夜逃げ……」
「どうやら、私が病院で向井さんの曾祖母の魂を回収した後、何者かが彼女の家に押し入ったみたいです。まあ、結局は朔夜さんとは赤の他人であるので、関係はないでしょうが」
衝撃の事実を聞かされた。何者かと言葉を濁しているが、きっと組合の人間が向井さんの家に押し入ったに違いない。とはいえ、前期最後の大学の日に、彼女から電話がかかってきた。その時の彼女の声は、そこまで慌てていなかったような気がする。だが、それでもこちらからかけなおしても応答がないことが、彼女の身に何かあったことを示していた。
「じゃ、じゃあ。向井さんの曾祖母の葬式は」
「行われていないでしょうね。自分たちの危機に、死んだ者の弔いなどできるでしょうか?」
葬式は行われなかった。
目の前の死神が彼女の魂を回収したのだとしたら、この世に彼女がとどまっていることはない。幽霊としてこの世に存在はしていないということだ。しかし、それが葬式を行わなくてよいという理由にはならない。
「面倒くさい人ですね。いつまでもそんなくだらないことで悩んでいるようでしたら、悩みの元凶となる人間たちの記憶を消して差し上げ」
「お断りします」
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