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「こんにちは。午後からもお願いします」
「こんにちは。よろしくお願いします」
「朔夜さんは午後からもしっかりと働いてくださいね。宇佐美君は、まあ心配はいらないでしょう」
私たちが塾に到着すると、すでに車坂が塾のカギを開けて中で生徒たちが来る準備を始めていた。車坂に挨拶したが、どうにも私と翼君の扱いが違う気がした。私だって、心配いらない働きぶりをしているはずだ。
「拗ねていないで、さっさと生徒が来る準備をしてください」
私の表情を見かねた車坂が口を出す。文句を言っても仕方ないので、態度で自分がいかに有能かを示すことにして、物置から掃除機を取り出して掃除を始める。翼君は生徒たちのためのカリキュラムを書き始めた。
そんな私たちの様子を見た車坂も、今日来る生徒たちの名簿を見ながらペンを走らせる。各自自分たちの仕事をしながら、生徒たちが来るのを待っていた。
『こんにちはー』
夏休みということもあり、三つ子は午後の最初の生徒としてやってきた。元気よく挨拶をして塾に入ってくる。相変わらず、三つ子の顔はよく似ていて、よく見ないと誰が誰だかわからない。
「こんにちは。今日も、頑張っていきましょうね」
「ハーイ」
車坂の言葉に、三つ子は素直に返事をして席に着く。カバンからテキストを取り出して、やる気十分な様子を見ていると、彼らもまだ子供だなとほっこりした気持ちになる。とりあえず、休憩時間まではしっかりと彼らの勉強のサポートに徹しようと心に決めた。
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