54いつもの日常の平和な光景

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「先生、何か、僕たちに聞きたいことがあるみたいだね」 「陸玖もそう思う?僕もそう思った」 「朔夜先生の顔を見ていたら、すぐわかるけどな」  しかし、それは開始十分で終わりを告げた。三つ子の方から私に話しかけてきたのだ。三人はいつも、一つの長机を三人で横並びに使っている。左から順番に陸玖(りく)、海威(かい)、宙良(そら)君の順番で座ってもらっている。その順番だと、最初に話しかけてきたのは、長男の陸玖だと思われる。座った時点ですでに入れ替わっていたとしたら、もうお手上げで、誰が誰だか判断ができないが。その後、海威君と宙良君が順番に話し出した。  どうやら、私は表情作りに失敗していたようだ。心を読まれてしまい、内心で動揺していると、呆れたため息とあきらめの声が聞こえてきた。 「生徒に心を読まれてどうするんですか。中学生相手に情けない」 「まあ、朔夜先生ですからね。仕方ないですよ」  死神と神の眷属に言われてしまっては何も返せない。黙って聞き流していると、思いがけないフォローが入った。  「朔夜先生を怒らないであげてよ」 「そうそう。朔夜先生が聞きたかったのは、僕たちの能力についてだよね。先生の事情で代役が必要だったみたいだけど、それがなくなって、僕たちの能力が実際にどんなものか見れなくて、残念がっているんだよね?」 「説明も面倒くさいし、かと言って、僕たちの能力を見せる気はないよ。残念でした」  フォローしてくれるのかと思ったが、そうではなかった。完全に三つ子にからかわれている。三人ほぼ同時に話すので、誰が話しているのかわからなくなってしまう。  車坂は私が中学生にまでからかわれているのがおかしかったのか、肩を震わせて笑いをこらえていた。翼君も同じように笑いを隠そうと必死だった。
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