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「先生、何か、僕たちに聞きたいことがあるみたいだね」
「陸玖もそう思う?僕もそう思った」
「朔夜先生の顔を見ていたら、すぐわかるけどな」
しかし、それは開始十分で終わりを告げた。三つ子の方から私に話しかけてきたのだ。三人はいつも、一つの長机を三人で横並びに使っている。左から順番に陸玖(りく)、海威(かい)、宙良(そら)君の順番で座ってもらっている。その順番だと、最初に話しかけてきたのは、長男の陸玖だと思われる。座った時点ですでに入れ替わっていたとしたら、もうお手上げで、誰が誰だか判断ができないが。その後、海威君と宙良君が順番に話し出した。
どうやら、私は表情作りに失敗していたようだ。心を読まれてしまい、内心で動揺していると、呆れたため息とあきらめの声が聞こえてきた。
「生徒に心を読まれてどうするんですか。中学生相手に情けない」
「まあ、朔夜先生ですからね。仕方ないですよ」
死神と神の眷属に言われてしまっては何も返せない。黙って聞き流していると、思いがけないフォローが入った。
「朔夜先生を怒らないであげてよ」
「そうそう。朔夜先生が聞きたかったのは、僕たちの能力についてだよね。先生の事情で代役が必要だったみたいだけど、それがなくなって、僕たちの能力が実際にどんなものか見れなくて、残念がっているんだよね?」
「説明も面倒くさいし、かと言って、僕たちの能力を見せる気はないよ。残念でした」
フォローしてくれるのかと思ったが、そうではなかった。完全に三つ子にからかわれている。三人ほぼ同時に話すので、誰が話しているのかわからなくなってしまう。
車坂は私が中学生にまでからかわれているのがおかしかったのか、肩を震わせて笑いをこらえていた。翼君も同じように笑いを隠そうと必死だった。
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