【番外編】もしも、高校生だったなら……

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「おはよう、蒼紗」 「おはよう、九尾」 「呼び捨てにするのは家だけにしておけ。学校では九尾先生と呼べ」  二階の自分の部屋から一階のリビングに顔を出す。そこにはすでにテーブルに朝食が準備されていた。エプロンをつけた翼君と狼貴君がいたので、準備してくれたのだろう。いつもの光景だ。九尾は彼等とは違って、狐のケモミミと尻尾をはやした美少年のままで、ソファに横になっていた。 「どうした、浮かない顔をして」  首をかしげる九尾はとても可愛しく目の保養なのだが、解せない。なぜ、九尾のみがケモミミ少年なのか。視線を翼君たちに向けるが、彼らにはケモミミ尻尾が見当たらない。どうせ私の願望が反映されるなら、彼らの設定を中学生にしてはダメだったのか。ケモミミ中学生という至高のシチュエーションになっていないことが残念過ぎる。  私は九尾のケモミミ美少年姿に気を取られて、大事なことを聞きそびれていた。先生、という部分を気にするべきだった。とはいえ、この時は気が動転していてそれどころではなかった。 「別に何も。それで、私は今何歳の設定なの?」  とりあえず、まずは朝食だと思いテーブルに着く。その後、翼君と狼貴君が私の正面に座り、私の隣に九尾が座った。 「設定って。今日のお姉ちゃんなんか変だよ。僕たちより一つ上だから、17歳で高校二年生だよ」  私の質問に翼君が回答してくれた。高校二年生。いったい、私が経験したのは何年前になるのか。懐かしすぎて記憶があいまいだ。うまく高校生らしく振舞えるだろうか。 「さっさと食べないと遅刻する」 「そうだな。家族全員遅刻なんてしたら、後が面倒だからな」 『いただきます』  狼貴君と九尾の発言により、いったん私の話は終了となり、朝食を取ることになった。それはいつも食べる食パンに目玉焼きで、姿さえ同じならここが現実世界と間違いそうなほどリアルだった。 「お姉ちゃん、制服に着替えないの?」  朝食を終えると、翼君と狼貴君が片づけを始めた。学ランにエプロンをしている姿は、家事をする高校生そのものだった。その背中をリビングのソファでぼうっと眺めていたら、翼君に指摘される。 「制服って、私はそんなのを着る年齢ではな」  ない、と否定の言葉が口から出かかったが、すんでのところで思いとどまる。先ほど、私の年齢を聞いたばかりだ。そうだ、今の私は高校二年生だった。ということは、制服を着て学校に行くのが私の日常だ。 「ご、ごめん。ちょっと着替えてきます」 「体調悪いなら、学校休む?僕は一緒にお姉ちゃんと学校に行きたいけど」 「オレも」 「我はどちらでも構わない」  ずいぶんと私は弟たちに好かれているようだ。思わず日ごろの自分の行動がよかったのかと感心していたら、その後の言葉にうんざりしてしまう。 「でも、体調悪いのなら、早めに彼女たちに連絡しないと家に押しかけてきますよ。ていうか、体調悪くなくても毎日一緒に登校しようとうちに押しかけてこようとするから、とめているのに」 「それって、もしかして……」
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