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「ちょっと! 何してんの! あんたたち」
顔を伏せた海斗の耳に女の声が届く。聞き覚えのない強く透き通るような声だった。
海斗は蹴られた場所を押さえながら丸めた体を引きずるように体を起こす。じんじんと鈍い痛みを堪えながら目を薄く開ける。
「あー? 何だよお前! 口出すんじゃねーよ! 」
颯太は顔を驚かせるも、翔は怯む事なく女に声を荒げる。
「もう警察呼んだから、さっさと居なくなった方がいいんじゃないの? 別にあんたたちが捕まったって私は何も困らないし」
女の言葉に海斗はハッとして体を起こす。颯太と翔は女を睨み付け足早に去っていく。
海斗が女の顔をはっきりと見た時にはすでに颯太と翔は居なくなっていた。海斗は目にかかった癖っ毛の伸ばしかけた髪を手で避ける。
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