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「……例えば奥さんが罪人だとしても、やっぱり罪を犯せば苦しむのは自分なんだよ。あいつは悪いやつだからバチが当たったって良いや。って思って居られるのは最初だけで君みたいにきっと苦しむんだよ」
千尋の言葉に葉月は小さく頷いた。
「奥さんへの謝り方は俺は分からない。浮気したって二股したって、それで例え人が1人死んだとしたって浮気した奴のことは警察は捕まえてはくれないから。ただ俺にしてみれば先生だって同罪だしお前1人だけが全てを背負うのは何か……俺はムカつく」
葉月は千尋の言葉に目を開いて驚く。
「ふふっ。ムカつく……か。そうだよね。ムカつくよね」
葉月は涙を指先で拭いながら、肩を揺らして笑う。
「……ムカつくから俺が殴ってやってもいいよ」
千尋がタバコを咥えて、手を広げ葉月に見せる。
「……うんん。大丈夫。あたしが殴るから」
葉月の言葉に千尋は目を丸くする。
「あはは。そりゃー頼もしいわ」
千尋はタバコの煙を吐きながら笑う。
「じゃあお節介なお兄さんは退散するよ。海斗が来た。じゃあな。殴りたいやつがいたり、働く場所に困ったらペンションリリィまでおいで」
千尋はポケットから携帯灰皿を取り出して、タバコを入れてまたポケットにしまい込む。
「あっ! ちょっと待って。その……記憶を無くした人は……どうなったの? 」
葉月は砂浜に手をついて千尋の方に前のめりになり、千尋に尋ねる。
「……俺の事は忘れてるけど、今でも愛しているよ」
千尋はポケットに手を入れたまま、葉月の方を向いて悪戯に微笑んだ。
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