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「俺は誰にも話さない。あなたが望んでくれるのなら俺の全てをかけて守るから」
海斗は葉月の肩から手を離して、自分の膝に手を戻す。顔を覆ったままの葉月を見つめる。
「……それなら……いつかまた会えた時、普通に笑ってくれるかな? 嫌な女だけど……は、犯罪者になっちゃうけど……また笑って話してくれたら嬉しいなぁ」
葉月が上を向いて涙を堪えながら微笑む。
「犯罪者になんてならなくていい。俺は誰にも話さないから」
海斗は静かに顔を左右に振る。
「うんん。海斗にそんなもの背負わせられない。それに自分の為にもちゃんと罪は償なわなきゃ」
「……千尋に何か言われた? 」
「……うんん」
葉月が涙を拭いながら唇を噛み締める。
「……羨ましいくらいの愛の話を聞いただけ……」
葉月が遠くを見ながら優しく笑う。
海斗は足を抱え込んでいる葉月の腕に手を伸ばし、掴んだ腕を自分の方に引いて葉月を抱き寄せる。
「俺、早く大人になるから。葉月さんを悲しませるものから全てを守れるくらい強くなるから」
海斗は葉月の細い肩をぐっと抱きしめて、葉月の頬に自分の頬を寄せて耳元で呟く。
「ふふ……生意気っ。言ったでしょ。キスの時はお喋りしないんだよ」
葉月は海斗の顔に手を添えて、優しくキスをする。
鞄に手が触れて鈴の音がなる。
「あ……あたしバッグなんて持っていってない。鈴の音なんてする訳ないじゃん……」
葉月がぱっと目を開き、涙をこぼしながら呟く。
「えっ? 何? 」
「うんん……大人には騙されてばっかりだ」
葉月が頬の涙を拭いながら微笑んだ。
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