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「……朔太郎のこと責任感じているんだろうけどさ……町内のやつらは良い人ばかりだから大丈夫だよ。元々ここは観光客向けなんだから、あんな事件は知らない人の方が多い。お前が気に病む事はねぇよ」
広斗が千尋のグラスを手に取って、氷を入れていく。一升瓶から焼酎を注ぎながら、柔らかな表情で話す。
「……別に気に病んでなんかねぇよ」
千尋は煙をゆっくりと吐き出しながら、タバコを灰皿に押し付ける様に消す。
「つーか濃いよ! 広斗っ水! 」
千尋は焼酎に口を付けて、広斗にグラスを押し付ける。
「それより千尋。聞いたぞ、お前あかりの発作が出た時、キスして発作抑えたらしいなぁ。真実の目の前で……」
吉次が千尋の肩を抱いて、にやにやと笑みをこぼす。
「まじかよ、千尋っ! かーっ。お前やる事が漫画だな漫画! 」
広斗が吉次に続くように大きな声で笑う。テーブルをバンバンとたたき、コップに入った焼酎をガブガブと飲む。
「うるせー。酔っ払いのクソジジイ共が。茶化してんじゃねえ! 吉次! 俺だって知ってっかんな! お前この間、真美ちゃんと夜中……」
「やっやめろ! 千尋っ! 」
吉次が慌てて千尋の口を押さえる。吉次の大きな手のひらは千尋の顔半分を押さえ付ける。
「千尋! 何だ? 続きを言え。吉さんの甘い台詞聞きてえなー」
広斗が吉次の腕を後ろから押さえ付け、千尋から離す。3人の笑い声が海の町に響き渡る。
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