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「そうかー。あんまり考えた事なかったけど、恵まれてるのかなぁ俺は」
海斗はヘルメットを指先で撫でながら、呟く。
「つーか千尋、免許あんの? 」
海斗がはっとした様に千尋に問いかける。
「ばっか。免許は18歳以上なら大体誰でも取れんだよ。おまけに俺みたいに顔が良ければなお良しだな。原付は16からだっけ。お前もあとちっとだな」
千尋は黒に赤い放射線に似た物が無数に出ているステッカーの貼られたヘルメットを装着しながら、馴染ませる様に首を左右に振る。千尋がシートに跨るとバックミラー越しに目が合い、得意げに笑った。
「……見た目は関係ないだろ」
海斗は相変わらず自信家の千尋から目を逸らしぼそっと呟き、ヘルメットを被りバックルをカチッと留める。海斗もダンデムバーを掴んで、千尋の後ろに腰を下ろす。
こんな時は千尋の言葉の一つ一つが、胸の奥の詰まっている物をさらっと引き抜いて行くようで、心地が良かった。神社で初めて2人で話した時の様な全てを見透かされて、それでいて体の中のモヤを掻き消して行く様な不思議な感覚だった。
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