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海斗の家から5分ほどバイクを走らせる。
冬が目前に迫った海辺の町は風が強く、薄着で出てきた海斗は千尋の背中に隠れる様に風を避けようとするも、容赦なく体は冷やされていた。
「さっむー。だから千尋そんな上着着てたのかよ。てゆーか神社? 」
海斗は自分の体を手で摩りながら千尋の黒のレザージャケットに目をやる。ヘルメットを脱ぎながら赤い鳥居を見上げる。
千尋の後を追うように海斗は鳥居をくぐって参道を歩く。神社を囲む木々たちは葉を落とし、夏祭りの時の様な青々とした面影は無く枝達が素顔を見せていた。
枯れ葉が参道を囲む様に落ちていて、歩くと時折、葉を踏む音が鳴る。
「えっ? 葉月さん? 」
拝殿の前の階段に座って携帯に目を落とす葉月がいる。
「えっ! 海斗? と千尋さん? 」
海斗の声に葉月は顔を上げる。
「俺様には順応なしもべがいるから、お前くらいどこに居るかお見通しだ。つーか、ここのやつらはすぐこの神社に逃げ込むな」
千尋はレザージャケットのポケットからタバコを取り出して、眉を顰め口角を上げ口に咥える。
「……ふふ。何それ」
葉月は口元に手をやって肩を揺らす。
海斗の視線、葉月の節目がちな目、千尋の空を見上げる瞳。水を打ったような静寂が3人を包む。一枚の葉がヒラヒラと舞い踊るように参道に小さな音を立てて、そっと滑り込む。
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