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「……千尋には分かんないんだよ。みんな小さい頃から同じ顔ぶれで、みんなが事情を知ってる。学校行ったって嫌な思いするだけだ」
海斗が千尋に視線をやった後、口籠る様に下を向く。
「学校なんてどうだって良い。勝手にすりゃー良いけど、町出てって何か解決すんのか? このまま母ちゃんと離れてそれで済むんか? 母ちゃんはこっちで1人お前のやった事の責任を感じて生きて、お前はそんな母ちゃんを見捨てて出て行く。それがお前の言う迷惑をかけない生き方なのか? 」
「だって……だって。この町でどうやって生きていけばいいの? 犯罪者として後ろ指差されて、このまま高校を中退してどこかで働く事も出来ない」
葉月は千尋に訴えかける様に声を震わせ、階段に置いた手を握りしめる。
「堂々としてりゃー良いだろ? お前は人を好きになった。そいつが酷い裏切り方をした。お前が全てを背負うものなのか? 先生好きになって何が悪い! たまたま好きになったやつが先生だったんだろ? その先生がお前と嫁さんを二股かけてた。お前は何を恥じるんだよ」
千尋はタバコを指に挟んで、顎を上げ葉月を見下ろしながら語気を強めて話す。
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