牙を無くした者たち〜青春編

迷惑をかけると言うこと

「……だってあたし……先生の家に勝手に入って……」

「合鍵使って入ったんだろ？　それは不法侵入なのか？　ちゃんと別れもしないで他の女と暮らしてるやつの方がよっぽど悪りぃだろ！　」

「千尋！　だってお腹の中の赤ちゃん死んじゃったんだろ？　それは……だって……」

海斗が顔を困らせながら千尋の腕を掴む。

「……本当に腹に赤ん坊は居たのか？　」

千尋はしゃがみ込んで土にタバコを押し付けて火を消す。ポケットから携帯灰皿を取り出して、吸い殻を入れる。

「……えっ？　な……に言ってるの……？　」

葉月が目を丸くして鼓動を抑え込む様に胸に手をあてる。

「……言っただろ？　俺には順応なしもべがいるって」

千尋は得意げな顔をして、片方の口角を上げにやりと笑う。