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「……表向き、その女が腹に子供が居なかったなんて言うわけがない。その女は被害者面している訳で、男に対しても責任取れと言っているだろう。ただ、もう男は公務員では無くなる。この町にも居れなくなった。女にとっては価値のない男になる」
千尋は足元の枯れ葉を足で引きずるように、靴を地面に押し付ける。
「……だから……どう言うことだよ」
海斗は大きく息を吸い込んで千尋の顔を見る。
「……女は問い詰めたって認めないだろうけど、俺は赤ん坊なんて居なかったと確信している。だけどそんな事はどうでも良いのさ。先生は職を失い、お前は学校にも居られなくなった。それが現実なんだから」
「……本当の話なの? 」
葉月が声を震わせ千尋の冷めた目を見つめる。葉月は真実を見つけたいと祈る様に千尋の目を見続ける。
「だからお前は……堂々としてりゃーいい。誰に何を言われたって、お前は1人の男を愛してただけなんだ。合鍵使って男の家に行っただけ。誰も傷付けてない。そうに思ってりゃいい。世間はお前を加害者として見るかも知れないけど、分かるやつらが分かってたらいいだろ? 」
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