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「あーっ! バイクで来ちゃった! 3人乗りでいいか」
千尋は歩きながら顔を歪めて、ぴしっと手のひらで額を叩く。腰に手をあてて、開き直る様に声を上げる。
「俺は歩いて帰れるから千尋、葉月さん送って行ってやってよ」
海斗は千尋の顔を見ながら「バイク寒いし」と腕を摩りながら笑って呟く。
「えーと。寒いらしいんだけど、それでも良いかな? 俺の上着貸しても良いんだけど、僕、半袖になっちゃう」
千尋はレザージャケットのファスナーを指先で掴んで、苦笑いを見せながら葉月に尋ねる。
「……海斗……ありがと」
葉月が今にも涙が溢れそうになりながら、唇を何度もきつくギュッとする。
「あたし……海斗には支えて貰ってばっかりだね」
「言っただろ? 俺は葉月さんを守るからって」
海斗はポケットに手を入れて、顎を上げて得意げな笑みを見せる。
「ははっ。成長したな。海斗っ」
千尋は海斗の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。笑みを浮かべ、頭をポンポンと叩く。
「じゃあ行くか! 殴りに行こうぜ! 」
千尋は海斗の肩を抱いて顔を寄せる。2人で鳥居の方へ歩き出す。
「はっ? いやいや、千尋は殴るなよ」
海斗は怪訝な顔をして千尋を指を差す。
「いやいや。名曲があるんだよ! 殴りに行こうぜってさ。そこは、チャゲアスかよって突っ込むとこだろ」
「……ちゃげあす? 」
海斗は眉間に皺を寄せる。
「……緊張感ないなぁ」
葉月は2人の後ろを歩きながら、呆れる様に1人微笑む。
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