お節介な男

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お節介な男

葉月は人気のない駅で1人ベンチに座る間宮の姿を見て声を出す。 「先生……」 電車の本数が少ないこの町の駅は閑散として、上りも下りも一本の線路で運行するので線路に降りて何歩か歩けば反対側に行ける。ベンチは小さい駅の壁に沿って3つずつ置いてある。 間宮は葉月から1番離れた場所のベンチの端に座っていた。カーキのブルゾンを着て下はデニムを履いている。膝の高さほどの黒いキャリーケースに、黒のリュックと同じメーカーの黒いボストンバッグがベンチに置かれていた。リュックとボストンバッグには蛍光の黄緑色のラインが3本ずつ入っている。 間宮は人の気配に気が付いて、葉月の方を向く。 「……葉月」 「……良かった間に合って」 葉月は緊張感と安堵から胸を押さえる。 「いや……何かさ、午後一の電車に乗れって……脅迫状みたいの渡されてさ」 「きょ……脅迫状? 」 「ほら。何か字もすごいんだけどさ」 間宮はデニムのポケットから1枚の小さく折られた紙を出す。葉月は紙を手に取り、乱雑な字で書かれた文章を読む。 「……本当。でも良くこんなのに従ったね」 「午後いちの電車に乗れ」それだけしか書かれて居なくて、葉月は思わず笑った。 「……その紙を渡してきたちょっと派手な2人組の男の子に葉月を連れてくるからって言われた。来なくて当然だと思ってたんだけど、とりあえず待ってみたんだ」 間宮は申し訳なさそうな顔をして、紙をまた折り目に沿って畳んでポケットにしまう。 「……奥さんは? 」 葉月はしまわれていく紙を目で追いながら、呟く様に尋ねた。 「他の女が家に来るような人とは結婚できないって言われたよ。流産もしてって。慰謝料払えって言われたよ」 間宮は頭を指先で掻いて、その指先をぎゅっと腹の前で握りしめる。
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