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「……先生……あたしも自分の犯した罪は背負う。逃げずに学校行く。だから先生も頑張ってちゃんと生きてよ」
葉月は組んでいた手を外してベンチに両手を置き、空を見上げるように上を向く。
空は相変わらず雲一つない晴天で、曇った心がここに2つある事など嘲笑う様に青々としていた。
「……うん。葉月は初めて会った時からずっと変わらない。いつも俺は君に振り回されてた気がするよ」
間宮もまた背もたれに寄りかかり、空を見上げる。
「……あたしはずっと先生が好きだったから。だからどうしたら振り向いてくれるのか駆け引きしてのよ」
「……俺なんか好きになったせいで辛い思いをさせたな。これからもだ。俺のせいで葉月だけじゃなくお母さんにまで辛い思いさせて……」
間宮が足の間に手を放り出し呟く。葉月が間宮の言葉を飲み込むように何度も瞬きをして、少しの間を置いてから口を開く。
「……先生。今でもあたしのこと好き? それとも彼女の事好きになっちゃった? 」
葉月がゆっくりと間宮に顔を向ける。冷たい風が葉月の背中を追い越す様に吹いてきて、葉月の髪の毛が柔らかに波打つ。顔にかかる髪もそのままに間宮を見つめる。間宮のリュックに付いている鈴の音が響く。
「……今でも好きだよ。自業自得だけど別れを告げた時……辛かった。全てを失った今より辛かったかも知れない」
間宮は葉月の方を見ないまま、ゆっくりと息を吐き出して答える。
「あたしのこと好きなら、恥さらして必死になって手放さないで欲しかった。いつも勝手に1人で背負い込んで、冷静で、いつだって……あたしばっかり……好きで……」
葉月が堰を切ったように声を震わせて涙を流す。肩を震わせ手で顔を覆う。
間宮は戸惑いながら葉月の腕を掴んで、自分の体に引き寄せる。
「ごめん……ごめん。葉月……傷付けてごめん」
葉月の頭を抱え込むように間宮は葉月の頬に顔を寄せる。
「……今でも愛してる」
間宮は葉月の背中に手を回し、きつく抱きしめた。
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