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目を開けると、軍服を着たもう一人の男性が私の前に立っていた。
「邪魔をしないでくれますか?」
私を殺そうとしていた男が、再び刀をもう一人の男に向かって振りかざした。
すると軍服の男性が自分の刀を抜き、男の刀を弾き飛ばした。
「チッ」
舌打ちをし
「私は諦めません。あなたの血をいただくまでは」
そう伝えると、走って森の中へ消えてしまった。
助けてくれた男性は、私を襲った男を追うことなく
「大丈夫か?」
私に話しかけ、手を差し出し、私が起きるのを手伝ってくれた。
「あなたは?」
「俺は、月城 樹。政府の組織に属している、隊士だ」
近くで見ると青い隊服に身を包んでおり、私より二、三歳ほど年上のように見えた。少し長い髪の毛を結っている。
「それにしても、なぜこんな時間に女性が一人で歩いている?俺が来なかったら殺されていた」
そうだ、私はもう少しで死にそうだったんだ。
「助けてくれてありがとうございます。ごめんなさい」
月城さんにそう伝えた時、生きているという安心感からか、涙が頬を伝っていた。
「なぜ泣いている?何か理由があったのか」
さっきまで無表情で話をしていた月城さんが、なぜか困った顔をして慌てているように見えた。
「ごめんなさい」
「わかった、理由は後で聞こう。怖いことを思い出させて申し訳ないが、あいつのことについてわかることがあれば知りたい」
月城さんは、壊れてしまった薬箱とおばあちゃんからもらった野菜を拾ってくれた。家まで送ってくれると言っている。
「君の名前は?」
「一条小夜です。小夜って呼んでください」
「一条……小夜……」
月城さんは私の名前をゆっくりと呟き、動きも一瞬止まったかのように見えた。
「どうかしましたか?」
私が話しかけると、いや……と言葉に詰まったのがわかった。
「小夜はケガは平気か?着物も汚れてしまっているな」
しかし特に何もなかったかのように、自然に私のことを気にかけてくれた。
身体のところどころが切れている、そんな痛みを感じが、立ち上がることができるし、身体も動くから、骨は折れていないだろう。
私は、薬箱から痛み止めを取り出し、飲んだ。
これで少しは痛みも引く。
出血している傷口は帰ってから洗い流し、塗り薬を塗らなければ、そんなことを考えていた。
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