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「決まってるじゃん。夏瑛も沢渡先生だよ。北川よりも。あたりまえでしょ」
美岬は北川に見えないようにウインクした。
「おれ、平野に訊いてるんじゃないんだけど」
まだ追及されそうな雰囲気だ。どうしよう。
「お、いたいた。北川、お前、もう課題終わった?」
さいわい同じクラスの男子がやってきて北川に話しかけたので、靭也の話は立ち消えになった。
夏瑛はほっと胸をなでおろした。
「しかし、北川もかわいそうな奴だね」
美岬がふーっと息をついた。
***
5時間目が終わると、とたんに美岬に手を掴まれ、カフェテリアに連れこまれた。
「ランチのときは邪魔が入ったから、もう気になって、気になって。午後の講義、ほとんど耳に入ってこなかったよお」
「別に……とくに話すことないけど」
「だめだめ。ちゃんと馴れ初めから話してくれなきゃ」
話さないと納得してくれそうにない。
仕方なく、靱也と出会った日のことから話しはじめた。
話を聞き終えた美岬はふーっと息を吐いた。
「でも、小6から思い続けてたって、何ていうか、夏瑛らしいといえばそうだけど、今どき、あんた、いつの時代の人? って感じだね」
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